デジタルに特化した制作プロダクションのアスタスタ(名古屋市)は、素材の質感をリアルに再現するデジタルカタログ化サービス「マテリアリー」の提供を開始した。
(小坂麻里子)
凹凸や透明度忠実に
サービスを依頼して素材を郵送すると、同社が見積もり後にスキャンし、3Dテクスチャーとしてカタログ化する。依頼者はオンライン上で確認でき、ウェブやECサイトで公開したりURLを送信したりしてエンドユーザーと共有できる。
3Dテクスチャーの特徴は高精細CGを実現するPBR(物理ベースレンダリング)スキャンによるリアルな質感。表面の凹凸、反射、透明度などを物理的に正しく表現する。
スキャンは様々な方向から光を当て、影の落ち方で素材の凹凸を特定。裏側から光を当てて透明度を測る。その結果から3Dテクスチャーを生成する。オンライン上で平面や立体の状態で見られ、倍率、角度、室内・屋外など光源を調整できる。
ラメ入りなど再現が難しい素材もあるが、凹凸5ミリ以内のテキスタイルなら基本的に対応可能。ちりめんやレース、壁紙などの建材、カーテン、レザーなども想定する。毛足の長いファーの場合は毛足を横方向に自然に流すなどすれば違和感なく表現できるという。ラメ糸やスパンコールを使った生地はスキャン後にCGデザイナーが加工することでイメージに近づけることも可能。サービス利用料が月額税込み2万2000円、スキャン料金1点4400円から。
DX(デジタルトランスフォーメーション)化で見本帳制作のコストを削減でき、生地の廃棄を防いでサステイナブルにもなる点を訴求する。
モニターとして導入する企業を募集するほか、今後は展示会の出展を視野に入れ訴求を強める計画だ。
DX化の一歩として
同社は06年に法人化し、ウェブサイト制作、UX(ユーザーインターフェイス)デザイン、アプリ開発、ECサイト構築などを行う。デザイナーとエンジニアが在籍することで一元的に開発を担うのが特徴だ。
これまで広告代理店を通した受注がメインで、同社の提案やクライアントの要望がダイレクトに伝わりにくい点にジレンマを感じていた。直接顧客に届けたい思いから、今回初めて自社サービスの提供に至ったという。
開発のきっかけは自社のオフィス改装だった。CGパースで様々な提案を受けたものの、質感や違いがわかりにくかった。見本帳も大きく重たく、見きれない。自社だけでなく、リフォームする人たちは同じ課題を抱えているのではないかと着目した。現物が手元になくてもリアルな質感を知りたいニーズはあるとみて、3DCGの知見を生かしたサービスを開発した。
インテリア向けの建材から始めたが、生地見本帳を使う繊維・アパレル業界にも注目。「DXの展示会などで情報収集し、同業界はデジタル化に課題があると感じた」(市川都佳取締役)ため、アパレル向けとしても提供開始した。見本帳やECサイトでの活用で「DX化の一歩として使って欲しい」(長坂正仁代表)と話す。