レディスショップ「アメリ・ヴィンテージ」を運営するビーストーン(黒石奈央子CEO=最高経営責任者)が勢いを増している。設立5年目の今期(19年7月期)売上高は前期比1.7倍の30億円を見込む。売上高の6~7割を占めるECは今上期(18年8月~19年1月)、前年同期比2.4倍。SNSに映え、ひと癖あるアイテムが口コミで広まり、おしゃれを楽しみたい女性の心をつかんでいる。
(関麻生衣/繊研新聞2019年3月28日付)
アメリ・ヴィンテージはオリジナルのレディス「アメリ」とインポートやビンテージ商品を揃えたセレクトショップ。14年10月に自社サイトを開設、16年春に東京・代官山に1店目を路面に出した。ほかに新宿ルミネ店があり、4月20日には大阪・心斎橋に路面店を開く。
◆こだわりのディテール
アメリの特徴はインスタグラムの画面上でも映える凝ったデザインだ。例えば、16年春夏には後ろ身頃をプリーツにしたトレンチコートをレディスブランドでいち早く販売、同ブランドの代名詞となっている。
SNSに映えるといっても、リアルに着られる服作りが信条。奇抜すぎるのではなく、ディテールにアメリらしさを感じさせる。「スタイルが美しく見える」と定評のシルエットも持ち味だ。商品は全て、ファーストサンプルの段階から黒石CEO自身が試着し、修正をかける。
公式アカウントのフォロワー数は18万5000人(26日時点)。18年春夏から毎月約2回実施しているインスタライブでは服のディテールや着こなしを見せて好評だ。インスタグラムのフォロワー数は売り上げと比例して増え、18年春には売り上げを大きく伸ばした。
◆SNSで売り逃し防ぐ
ブランドを運営する上では、「死に筋を作らないことが大事。売れると確信した商品しか作らない」(黒石CEO)。商品の売り逃しがないよう、全てインスタグラムに投稿し、必ずファンの目に触れさせる。
売れる商品は、店頭の声を参考にしつつも、黒石CEO自身の感覚で見極めた結果だ。自分が着たいと思えるかどうか吟味したものが、消費者の求める服と合致している。
18~19年秋冬には後ろ身頃をフレアにしたシンプルなウールコートを作ってヒット。30代の新規顧客の獲得にもつながった。こうしたそぎ落としたデザインに今春夏はさらに注力した。「アメリらしい凝ったデザインは作りながら、30代には通勤や普段にさらっと着られるような、肩の力を抜いたものも必要だと思った」。実際に麻調合繊のジャケットとハーフパンツのセットアップが売れている。
今春夏は、バックプリーツのトレンチコート(2万8700円)やジャケットも売れ筋。毎年支持されるオケージョン用ドレスやオールインワンも好調で、日常にも着回せるものが受けている。
1月には中国・上海に現地法人を設立した。年内に現地の大手ECモールへの出店を視野に、来年には実店舗の開設を目指す。国内では5年以内に3~5店の出店を見込むが、「無理に急ぐのではなく、ブランドを表現できる立地を吟味したい」という。