03年にスタートしたラグジュアリースポーツのメンズブランド「ハイドロゲン」を売却し、22年にスニーカーの「マイク・ドント・ドゥ・イット」を始め、23年秋冬からウェアの「AB」(エービー)もスタートする。自らの手で育て上げたブランドを離れ、新たな試みに乗り出した理由を聞いた。
(聞き手=柏木均之)
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ハイドロゲンは自分が作り、20年近くやってきたブランドでもちろん愛着はあったんだけど、企業として大きくなると、ステークホルダーも増え、やりたいことがあっても簡単にはやれないなと感じる場面も増えていたんだ。そんな時、韓国のある企業から熱心なオファーをもらい、売却を決めた。経営、デザイン、全てお任せしますってね。
マイク・ドント・ドゥ・イットは、ハイスペックなスニーカーをあえて上質なカーフと天然リサイクルレザーのソールを使って、高級ブランドの靴を作っている工場で作ったら面白いかなと思って始めた。ブランド名には「もっと気楽にやれば」っていうメッセージを込めた。プロのアスリートのように試合に勝つために真剣になるのではなく、気軽に履いて楽しんでほしいっていう提案だ。
ABは、スウェットパーカやチノパンツ、ウェスタンシャツとか、男だったら何歳になってもずっとこういう服を着たいだろってアイテムだけを作る。最近はネクタイまで締めなくても良いけど、ジャケットくらい着ないと場違いな時もまだあるから、ストレッチ素材でしわになりにくく、着心地の楽なセットアップも作った。
決めているのはトータルブランドには絶対にしないってことだけ。ワードローブに必要な服だけを作って売る。なにより全身一つのブランドだけ着る人って少数派だと思うし、無駄にいろんな物を作って余らせるのは今どきじゃない。ちゃんとストーリーの伝わるものだけを作って、それが伝わるような売り方を徹底したい。