AIモデル(東京、谷口大季CEO=最高経営責任者)が自社サービス「AIモデル」の提供先を増やしている。導入企業はAI(人工知能)で生成したモデルをECや広告などに起用することで、手間と費用がかさみがちな撮影業務を省力化する。ECなどの成約率も高くなるという。現状、導入数の7割ほどがアパレル事業者。大手との取り組みから始まったが、「中小の事業者にも利用してもらえるはず」(谷口CEO)としている。
(永松浩介)
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谷口CEOは、EC支援などのインターグルーブ(東京)を06年に設立。多くの事業会社と取り組む中で、労働集約的な作業である撮影業務に現場が疲弊しているのを問題視、20年にAIモデルとして分社した。三越伊勢丹やしまむら、ライトオン以外にも肌着や子供服など現在100社近くが導入している。
類似サービスの多くはプロンプト(指示文)ベースの画像生成AIモデルを利用しているが、同社は自社開発だ。生成したバーチャルヒューマンに対しては追加学習をしない仕様にしており、スタッフによるスクリーニングと類似度チェックを課し著作権や肖像権の問題を回避している。
提供サービスは、①専属モデルの生成②モデルの導入支援(画像・ビジュアル作成)③着せ替えプラットフォームなどの活用支援――の三つのレイヤーで構成する。着せ替え機能はあるスーツブランドで実験しており、平均成約率で4倍、受注単価も50%増と有用性が実証された。
広告やルックブック、EC画像など用途によって効果は変わるが、撮影から納品までの期間は最大で50%短縮、コストは最大70%削減出来るという。特に指示通りにいかない子供のモデルや、数が少ない下着モデルなどでAIモデルへの代替効果は大きい。後者の上位10社のうち、半分が導入しているという。
もっとも、重視するのはコスト削減効果より成約率。例えば、実際のモデルなら一度に数十枚の商品着用写真を撮影するため準備などに一定の時間がかかるが、AIモデルなら適時着用画像の作成が可能。EC上にいつでも画像を掲載できるため機会損失を防げるうえ、モデル着用画像の方が買い上げ率は高くなる。
大手との取り組みから始まったが、今後は中小など裾野を広げていく。「本質的には規模を問わないサービス」と中山佑樹CTO(最高技術責任者)。利用料金は取り組みの深さにより変わるが、中小でも取り入れられる。
営業先のサービス理解と、AI利用に関する社内ルール整備の遅れがネックだという。同社にはNTTドコモ・ベンチャーズなどが出資しており、27年の株式公開を見据える。