《ファッションビジネスは今、何をすべきか》アフターコロナを見据えて 商社・繊維事業㊦

2020/09/14 06:28 更新


 商社の繊維事業が今、取引先と一緒に是正すべき課題は大量生産、大量廃棄問題だ。コロナ禍で衣料品の需要は巣ごもりアイテムやカジュアルを除き、大きく落ち込む見通し。ここで〝作り過ぎ〟の流れを断ち切る。大量生産、少量消費に陥れば在庫がさらに増えてしまう。

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■難問どう解決

 難しいのは、よりカジュアル化が進むとみられ、商品単価は上がりにくいこと。価格を抑えるには東南アジアやバングラデシュで作りたいが、生産ロットが大きくなりがちで大量生産から抜け出せず、簡単には解決しがたい。理想は受注と生産をほぼイコールにする仕組み。店頭と工場をオンラインでつなぎ、売れると同時に生産、供給される仕組み作りやQRと結び付けた受注生産など。価格を下げるために多く作るという方法を大胆に改めないと改善は見込めない。ただ、主役が店からECに移り、店数が減れば、店頭を埋めるための多品番や店頭在庫を一気に減らすことは可能だ。デジタル技術の活用で生地や製品試作を3D画像サンプルに置き換え、何度も試作する手間や時間、コストを減らす試みも進む。無駄を一つずつ取り除けば収益性の向上が見えてくる。

 以前から言われ、コロナ禍で急務となったのが衣料品OEM(相手先ブランドによる生産)以外の柱。一つのテーマは「ウィズコロナ」。商社トップは「コロナで需要、売れる商品が大きく変わった」と話し、すでに第1四半期業績で成果が出始めている。「安心、安全、衛生」をキーワードにフェイスガードや防護服、医療用ガウン、衛生材関連を今後も強める。衣類、雑貨では抗菌、抗ウイルス素材を使った商品が普通になる。非衣料、非繊維事業の拡大も鍵で、繊維専門商社でも柱に育ってきた。今後さらに加速しそうだ。

■新たな道作り

 国内市場の縮小が加速すれば、海外事業の拡大を急ぐ必要がある。今は厳しいが、拡大の方向は変わらない。海外収益が日本での収益を上回る企業も増えてくるだろう。海外現地法人などを活用し、様々な手を打つ。

 この間のトップ取材で感じたのは、厳しい現実を受け止めながらも悲観せず、「コロナで変わる世界にどう対応するか」という前向きのパワーだ。印象的だったのは蝶理の先濵一夫社長。今期から始まった中期経営計画で、経常利益100億円台常態化の基礎固めを一つの目標にする。「コロナがなければ既存事業のブラッシュアップなどで100億円の道筋が見えていた。しかし、いったん消えた。次に作る道は見えていた道ではない新たな道。チャレンジのしがいがある」。厳しい事業環境下での変化、挑戦は容易ではない。ピンチをチャンスに変えた企業がウィズコロナを乗り越え、アフターコロナにたどり着ける。その時の世界は以前の世界ではない。新たな市場、ビジネスチャンスが広がっている。



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