「あなたの可能性を拡げる」という理念を掲げ、人体に備わっている能力を引き出し、拡張する「アドエルム」テクノロジーを開発したアドエルム(東京)。従来の機能素材は物性評価が重視され、吸水速乾や伸縮など物の性能訴求にとどまっている。対して「アドエルム」は素材が人体に触れた時に起こる生理反応に着目。ユーザーがそれを身に着けてどうしたいのか、運動や仕事のパフォーマンス変化をもたらしたいのか、心地良く眠りたいのか――使用目的に主眼を置き、目的に合わせた生理反応を促す素材を研究・開発している。「アドエルム」とは何か、世の中に提供したい価値とは。
■用途に合わせた4つの素材を開発
「アドエルム」は人体の生理反応を利用した技術です。鉱石から抽出した様々な元素を調合したパウダーを繊維など様々な素材に加工し、その素材が皮膚に刺激を与えた時の反応を利用して体の運動や休息の効率を高めるという仕組みです。
皮膚は痛点、温点、冷点、圧点の四つの感覚器を備えています。例えば、寒さを感じると毛穴を閉じ、暑さを感じると毛穴を開いて発汗し、体温を調節する。そんなマルチファンクショナルウェア(皮膚)を身に着けているのですから、持っている機能にフォーカスし、うまく利用できる素材、あるいは機能を拡張する素材を開発し、「ヒーロースーツを作る」ことが私たちの研究・開発の原動力です。
これまで、人体生理学、脳科学、心理学に基づいて研究開発を積み重ねてきました。体のメカニズムを学びつつ、体のパフォーマンスを変化させる、あるいは体のコンディションを整えるといった目的に合わせて、体に生理反応を起こさせるよう働きかけるためには、どのような鉱石の調合パターンが最適なのか、検証を何度も繰り返して導き出してきました。
今は4つの用途に対応したパウダーが揃いました。快適な入眠を促す「アド0」、リラックス用の「アド1」、日常的な運動や仕事の効率を高めたい人を対象にした「アド2」、「アド2」を上回る効果を発揮し、アスリートのような人を対象にした「アド3」があり、それぞれを活用した商品を自社および協業パートナーと開発しています。
■世界基準をつくる
私たちは、物性評価に基づく従来型の機能素材を“1G(ジェネレーション)ファブリック”とし、「アドエルム」のように人の体にフォーカスして開発した素材を“2Gファブリック”と定義付けています。とはいえ、物性の評価基準はあっても、素材が人体のパフォーマンスやコンディションにどのような影響を与えたのかを評価する基準は存在しない。ですから、私たちが評価するための指数「アクティブ・インデックス」を設けた。これが2Gファブリックの評価基準になるわけです。
消費者が目的や体調に合わせて商品を選びやすく、比較購買しやすいことが基準を設けた最大の理由。開発者、販売者にとっても基準があることで開発や接客がしやすくなると考えています。
これまで検査機関と延べ100人以上の被験者の協力を得て、「アドエルム」製品の着用試験を実施し、筋電図、脳波、心拍、呼気代謝といったデータを取得してきました。取得データをグラフで可視化し、「アクティブ・インデックス」を示しています。世界基準にするべく、これらの情報は随時、公式サイトに公開し、他社にもどんどん利用していただきたい。研究に関わる情報はオープンにしますから、どんどん意見やアイデアも欲しい。たくさんの人の知恵、アイデアが集まってどんどん進化していける、“今あるベスト”を常に導き出し、提案し続けていきたいと考えています。
■“知識”も提供する
「あなたの可能性を拡げる」という理念を具現化するために必要なもう一つの大事な取り組みをスタートしました。それは“マインドビルディング”というもので、言い換えると「未来設計のための可視化」。人はその時々の情緒や固定観念というベールを自ら被り、思い描くビジョンに対して遠回りになる選択をしてしまうことが少なくありません。例えば、「海外に行きたい」けど、「仕事がある」「家族がいる」のように色んな理由を付けて、目標がどんどん遠ざかってしまう。
そんな人に対し、今の状況と思考を整理し、目標を達成するにはどうすればいいのかを可視化できるように設計してあげようというのがマインドビルディング。カリキュラムを組み立て、アスリートやビジネスパーソン、子供などを対象に教育の観点で知識やノウハウを提供していきます。
「アドエルム」は厳密に言えば、知識がないと使ってはいけない物です。例えば、「アド3」の商品は心拍が上がり、エネルギー消費が増える傾向がありますから、「寝る時には着用しないで」と言っている。薬ではありませんが「用法・用量を守って正しく使う」ことが重要。ですから、マインドビルディングを通じ、目標に向かう意識と筋道を整え、やるべきことを明確にしてあげることで必要な道具(アドエルムの商品)もわかる。最短距離で効率的に目標に向かうための知識と道具を揃えて提供し、世界中の“ヒーロー”を支えたい。それが私たちの基本的なスタンスです。