小松マテーレ 80周年は苦労と努力の賜物 佐々木社長と中山専務に聞く(PR)

2023/11/20 00:00 更新


 小松マテーレが今年80周年を迎えた。歴史を振り返りつつ、今後目指す方向について佐々木久衛社長と中山大輔専務に聞いた。

社員の力で苦境乗り越え

― 80周年おめでとうございます。

佐々木 80年の歴史は、様々な苦難の中、先人たちの苦労と努力がありました。

 直近の20年ほどの間も、経済環境が大きく揺れ動いた。01~05年は中国が台頭、円高もあり業績を落としました。08年にはリーマンショックの影響を受け、そしてこの3年間はコロナ禍や国際的な紛争など大きな事業環境の変化に見舞われました。

 その中でも営業利益で15億円ほどを維持しています。なぜこれができているのか。環境変化に対して、社員が業績の足を引っ張る要因を一つ一つ潰してきてくれたからです。営業、生産、開発などに培われてきた力があったから乗り越えられた。

 今年も原燃料費の高止まりが続き、22年度からの厳しさを今も引きずっていますが、適切に手を打ったことで上期の業績は順調です。下期には、収益構造を従来の形に戻す。これが最大の課題です。そのため、全社を挙げて、品種を変え、価格を上げ、生産性を向上させ、ロスの最小化を図っています。月に1500もの試作を行い、懸命に物作りに取り組んでいます。

代表取締役社長 佐々木久衛氏

― 来年からの次期中計の骨子は。

佐々木 「技術に裏打ちされた感性、驚きと感動のものづくり」、この姿勢は守り抜きます。世界中に物を出し、学んできた感性、各事業、分野の積み上げが、次の中期計画の基礎です。中計ではグローバル化とサステイナブル、ブランド力強化が軸になります。

南青山のショールームから世界へ発信

― グローバル化は相当すすみましたね。

中山 この20年で生地ブランドは確立できました。以前は商社を通じての間接情報しか得られませんでしたが、自ら海外に出て、顧客のニーズを直接聞き取り、これを工場にフィードバック、物作りに直結させたことで小松ブランドが磨き上げられました。

代表取締役専務 中山大輔氏

― 当初は苦労されたようですが。

中山 我々が直接海外の顧客に生地を販売することはある意味タブーでしたが、大手メーカーや商社がやらないニッチなマーケットを攻め、強い決意で切り拓いてきました。スポーツウエア向けの機能素材は当社の強みです。一方でラグジュアリーブランドのアウター向け機能素材はだれも提案していない。空白の市場だったのでここを狙いました。01年7月に大手ラグジュアリーブランドに採用され、ようやくラグジュアリーに評価される生地メーカーになった。03年に初めてプルミエール・ヴィジョン(PV)に出展、13年には日本の企業初のPVアワードグランプリを受賞しました。

― 次期中計でもグローバル販売は重点課題ですね。

中山 海外に営業拠点を構えることは中長期的な課題です。そのためにもまず現場力を上げるため、9月にグローバルマーケティングチームを立ち上げました。私以外は20代、30代の若手のチームです。そして11月には南青山にショールーム(青山ショールーム)ができた。ここがチームのヘッドクォータになります。

 欧州のラグジュアリーブランドも日本に注目、年に何回かマーケティングリサーチに来ています。その時に回るのが南青山、表参道、原宿あたりなので、このエリアに拠点を作りたかった。ショールームではプロモーションしていく生地をすべてみせる。そしてここで集めた情報を工場や開発とキャッチボールして物作りに生かしていく。そんな場にしたいですね。

 ショールームは1、2階合わせて250平方メートルほどで、2階は常設のサンプルを500点ほど展示。本社のアーカイブ生地も企画展のような形で随時展示、紹介します。1階はBtoC向けの商品を展示しますが、販売は行いません。気に入った商品があれば、QRコードを読み取り、ネットから購入してもらう形です。またクリエイター2名が常駐し、特殊なミシンを1台置いて、アトリエとして見本作りも行います。

青山ショールーム2階
青山ショールーム1階

SDGsに対応した行動様式に

― サステイナブルの方針は。

佐々木 サステイナブルは最重要課題です。小松マテーレらしいもので、地球環境の保全、CO2削減にコミットメントしていきたいと考えています。

― 環境問題への取り組みは早かった。

佐々木 91年に小松精練環境宣言を発表しました。この時は個別の活動が中心でした。次に07年に全社的に管理できる組織を設置、これが第2ステージ。21年に第3ステージとして、小松マテーレサステナビリティビジョンを策定し、改めてSDGs(持続可能な発展目標)に対応した行動様式を決めました。

― 次期中計で掲げる目標は。

佐々木 当然国の方向に沿った数値目標はすべてやっていく。二つ目には既存商品の環境配慮型商品「マテレコ」への転換を進めます。マテレコは2~3年前まで全社売上高の10%ほどでしたが、23年度には30%を達成し、30年には売上高の50%以上とする計画です。

 三つ目は環境に直接貢献できる事業の拡大です。炭素繊維ロッド「カボコーマ」は、大きなコストをかけずしかも環境に優しい建造物の耐震補強材です。自社の工場建屋で設備稼動しながら実証施工も進めており、新しい工法として広げていきたい。

 また、排水汚泥をゼロ化できるバクテリアによる処理技術は現在、大学で原理解明が進んでいます。実用での効果も表れています。専門的な企業と協業し、地球環境の改善、保全に直接つながる事業を伸ばす方針です。この推進のため、10月に新規事業開発部にバイオ製剤グループを設置しました。

 事業だけでなく、働きやすさや安全、安心の作業環境整備などの面でも、IT活用や自動化などの投資をしていきます。

― マテレコで特に好調なものは。

中山 天然成分配合ファブリック「オニベジ」とフッ素化合物を含まない撥水加工素材「ダントツ撥水CZ」です。それとリサイクル原糸使いの生地は標準的になっていますね。

― 二次製品関連の事業はどうですか。

中山 製品事業は、本社に併設した「モノーボ」と6月にオープンした金沢東山の直営店「まてーれ」に続き、3店目が南青山のショールーム1階にできました。ファッションをやるならここ、ようやく主戦場に立てた。百貨店や商業施設で続けてきた期間限定店で「マテモノ」ファンもできてきましたので、南青山のショールームでさらに飛躍を図ります。

青山ショールーム2階テラスにて

https://www.komatsumatere.co.jp/

企画・制作=繊研新聞社業務局



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