【トップインタビュー】GSIクレオス 吉永直明社長

2018/04/27 03:58 更新



 繊維事業と工業製品事業の両分野で新たな価値創造の仕組みを構築するGSIクレオス。「事業創造型商社」として、ユニークな存在感を示す同社が掲げるスローガンは「Produce the Future(次代を創る)」。国内外のネットワークと、長い歴史で培ってきたノウハウを駆使し、独自性の高い商品を提供している。繊維と工業製品の双方の強みを融合させながら、未来への挑戦を続ける。

”コネクト”できることが強み

―イノベーションが必要とされる時代だが。

 今、世の中は、政府が提唱する「コネクテッド・インダストリーズ」や、ドイツが提唱する「インダストリー4.0」に見られるように、第4次産業革命のまっ只中にあります。世の中が大きく変革しようとしていますが、イノベーションは全く新しいものから生まれることはありません。いつの時も今、すでに存在するものの組み合わせから生まれます。1+1が3になったり、4になったりするのです。当社は繊維と工業製品の両方を主力事業としてきました。この2つの連携を強め、組み合わせることで、イノベーションを実現させます。

 商社はメーカーの様に独自の素材だけを保有しているわけではありません。“事業創造型商社”として、例えば、メーカーが生産した糸を我々のアイデアで独自の価値を生み出すような業務を手がけています。商社はメーカーではないと言いましたが、逆に様々な相手と取引できるという強みがあります。言い換えれば、プロデューサーとして、仕組みを構築することや様々なアイデアを1つにまとめて“コネクト”できる強みを持つのではないでしょうか。そのためには“気付き”が大事です。深みと幅、両方の機能を持つことで、初めて独自のものが生まれると考えています。時代を先取りする企業と次々に取り組んでいきます。

海外での動きをさらに加速

―グローバル戦略を充実させている。

 この間、グローバル戦略を推進してきましたが、企業をさらに成長させるためには海外販売の拡大が不可欠です。国・地域としてさらに強めたいのが北米です。ニューヨークとオハイオには現地法人と事業所を置いていますが、南西部にも拠点を構えたいですね。主に工業製品の取り扱いを検討しています。

 アジアはここ数年、ASEAN(東南アジア諸国連合)での体制を急ピッチで整備してきました。先日もベトナム・ハノイにGSI香港社の駐在員事務所を設置しました。将来のアジアの勢力図を考えると、ベトナムの体制をもっと充実させるべきかもしれません。ベトナム、タイ、インドネシアといった各拠点の連携を強めながら、ASEANでの動きをさらに加速させていきます。

海外拠点の連携により中国国際服装服飾博覧会(CHIC2018)に出展

 国内の生産機能も有効に活用します。当社は日本にインナー関連の子会社を保有しているのですが、縫製機能が高く評価されています。国内で工場を運営することは難しい部分もありますが、顧客ニーズに合ったものを、オンタイムで、多品種で生み出せることは大きなメリットです。このノウハウと大量生産を得意とする海外の工場を結び付ければ、さらに力を発揮できるでしょう。発想を転換すればビジネスはまだまだ伸ばすことができます。販売面では、国内の優れた商品を海外で売ることはもちろん、商社ですから海外の優れたものを海外で販売する“外・外”のビジネスも強めたいですね。

GSI香港社・ハノイ事務所が入るV-TOWERビル

夢と希望を持ち、ワクワクできる会社

―人材教育についての考え方は。

 企業運営という点で最も重要なのが人材教育です。商社の資産といえば人材ですから、人材教育はマストです。何はさておき取り組まなければなりません。研修は細かく実施していますし、役員の合宿も然りです。繊維、工業製品、管理部門が互いの業務をしっかり理解して、連携を深めています。繊維は繊維、工業製品は工業製品というように分断するのではなく、互いに勉強することが大事です。そうすることで〝気付き?も生まれますし、互いの知見が深まれば、必ず結び付きが見つかります。

 もともと工業製品の事業は、繊維ビジネスで顧客が必要とするものを調達、販売することで確立したものです。これからも、連携により新たなビジネスが生み出される可能性もあるでしょう。繊維、工業製品の双方でユニークな動きが始まり、相乗効果もさらに発揮できると確信しています。

 運営の部分では、基幹システムの確立といった最低限のことは当然、進めてきました。ただ、今後、大切だと思っているのが、IoT(モノのインターネット)も踏まえて、より営業が活動しやすい環境を作ろうということです。出資先であるシステム会社と2~3年かけてじっくり取り組んでいきます。

 当社は1931年の設立で、長い歴史を刻んできました。その間、業績が厳しい状況もありましたが、ユニークな事業体として活動できていると自負しています。企業ですから成長をめざすのは当たり前ですが、社員にとって夢と希望がある、ワクワクできる会社になることが重要です。ワクワクしないと面白くないですから。

繊維分野(産業資材用途)でも活用が見込める先端複合材向け高速裁断機

2021年トピックス

異業種の事業をコネクトしたユニークな商社

 東京五輪の翌年なので、経済が停滞するのか、勢いが継続するのかは分かりませんが、当社に関しては繊維と工業製品が自然に融合できていると思います。売り上げ比率は、工業製品がもう少し向上しているでしょう。繊維も新たな素材を開発、販売して今以上に成長していると思います。糸から製品までの各段階を“コネクト” して、より深みのある事業を確立できるのではないでしょうか。糸から製品までの各段階もそうですが、繊維と工業製品を“コネクト” すること。つまり繊維、工業製品の融合が進み、ユニークな商社として事業を創造していると確信しています。

profile

1955年 生まれ。1979年4月 グンゼ産業(現GSIクレオス)入社、

2002年7月GSIホールディング社社長兼GSIアメリカ社社長、

2007年6月 取締役、2012年6月 常務に就任。2017年12月から現職。62歳。


【URL】http://www.gsi.co.jp/

(繊研新聞本紙4月23日付け)




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