【ニューヨーク=杉本佳子通信員】23~24年秋冬ニューヨーク・コレクションは、メンズライクなアイテムにソフトな要素を加える傾向が広がっている。特に目立つのはウエストを絞ったテーラーカラージャケットだ。コートもマニッシュなテーラーカラーのコートが多い。
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プロエンザ・スクーラーは今年20周年を迎える。今までのミューズたちも歳を重ね、母になった女性もいる。今シーズンは成熟した女性の日常と気分に思いを寄せ、彼女らが着たいワードローブを揃えた。ショーは女優のクロエ・セヴィニーが架空の日記を朗読し、ランウェーの先頭を切ることで始まった。ギャラリーでのパーティー、母として妻としての日常、過去の追憶、友人とのやりとりがつづられた日記。女性の日常を丹念に見つめながら作ったコレクションだ。
テーラーカラーのジャケットは、背中心をコンシールファスナーでスラッシュ開きにできるデザイン。きゅっとくびれたウエストに細いベルトで、きりりとしたイメージに遊びとソフトな表情を加える。ジャケットはサイドベンツを後ろだけでなく前にも入れた。スカートとドレスも布を裾に向けて少し重ねるか深いスリットを入れたデザインが多く、歩けば軽やかな動きを作る。メタリックレザーのパンツ、柔らかいレザーにギャザーをたくさん入れたベアショルダーのロングドレスなど、レザーが多い。柄と装飾は抑えた表現。ブルーのベルベットのドレスは染色過程で上方に氷を置き、溶けてくる水でオンブレを描いた。ポンポンを垂らしたフリンジとプリントは、無地の布の影に控えめに使った。
ジェイソン・ウーのショーは、グッゲンハイム美術館内の小劇場で来場者たちが客席からステージを見上げるスタイル。ステージにはアートオブジェのようにアレンジした植物が置かれている。今シーズンはドイツの植物学者兼写真家、カール・ブロスフェルトの植物写真に見られるはかなさと強さに着想した。