22年春夏欧州メンズファッションウィーク終了後も、いくつかのブランドがデジタルで新作を披露している。コロナ禍を経て、ファッションウィークの公式スケジュールへ復帰するブランドが増える一方で、独自のスケジュールでコレクションを発表するブランドもある。
(小笠原拓郎)
「ヴェットモン」はパリ・メンズコレクション期間中に、新たなブランドのプロデュースというニュースを発表した。それは現在のファッション業界の在り方に一石を投じるコンセプト。ヴェットモン・シークレット・プロジェクトと題されたこのプロジェクトは、コンテストにもインフルエンサーにも頼らず、コングロマリットの支配からも自由なブランドを作るというものだ。ヴェットモンのヴァザリア・ファミリー・ファウンデーションが資金や生産、サプライチェーンなどをバックアップして新しいブランドを育てていく。
その第1弾として発表されたのはヴェットモンのクリエイターによる新ブランド、VTMNTS。100ルックの写真を配信した。100のルックは、ファッション業界への100%のコミットメントを示すために象徴的に選ばれた。ジェンダーを問わず、伝統的なメンズウェアやサルトリアのテーラーリングから影響を受け、ロゴを使わなくても一目で分かるブランドを目指した。ファッション業界はラグジュアリーブランドを中心にロゴのビジネスを拡大し、品質が落ちていると考えていることから、ブランドロゴを強調せず品質を重視する。次世代のために伝統的なぜいたくを再定義するのが目的という。
ファッション業界の抱える問題点と、新しい才能を生み出すためのフォーマットを作ろうというヴァザリア・ファミリー・ファンデーションの意図には共感するところが多い。ただ、その第1弾となる100ルックの写真だけでは、クオリティーの高さは実感できなかった。このブランドのビジネスの今後と次なるブランドプロデュースの行方に注目したい。