商社のアパレルOEM・ODM(相手先ブランドによる設計・生産)事業では、生産地ポートフォリオのリスク分散を目的としたASEAN(東南アジア諸国連合)シフトが進んだ。海外市場を開拓する動きも進展している。各社ともコロナ下で混乱したサプライチェーンの修正が喫緊の課題。今年は、ウクライナ情勢、中国におけるゼロコロナ政策、新疆綿問題を含めた欧米と中国との摩擦などを背景に、世界市場でのビジネスリスクが表面化した。こうしたなか、多様な調達ルートや、それらを必要に応じて組み替える柔軟なサプライチェーンが求められている。
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■ベトナム起点に欧米
東レインターナショナルは、東レ本体と連携するメーカー系商社としての機能を発揮し、素材から製品までの一貫生産による差別化で製品開発の高度化を図る。ベトナム中部・クアンガイで100%出資の縫製工場を立ち上げ、今年8月から本格的な量産がスタート。ここをベトナムのマザー工場と位置付け、付加価値型のアウトドア・スポーツウェアの生産に注力。同工場を拠点にして、現地の既存工場をクラスター的に管理する生産体制を整える。ベトナムでの生産体制を活用して国内外のスポーツ衣料のOEM・ODM事業を広げる構え。特に欧米での市場拡大を目指す。
スタイレム瀧定大阪は、インドネシアのバンドン市に現地法人、PTスタイレムインターナショナル・インドネシアを設立、今年3月から事業活動を始めた。現地法人化することで、日本本社の調達サポートをさらに強める構えだ。同社は、原料やテキスタイルをインドネシア国内で在庫し、ストック機能を持つ。それによりインドネシアをはじめ東南アジア域内での縫製に対し、生地調達のリードタイムを短縮する体制を整える。インドネシアで独自の糸やテキスタイルを開発し、縫製までの一気通貫のサプライチェーンを構築する構えだ。
■中国産から置き換え
蝶理アパレル部は、得意な布帛製品に加え、ニット、カットソー製品で東南アジアでの生産を強める。ジャージー製品ではフィリピン、ベトナム生産を進める。特にフィリピンは、キャリア向けのデザイントップ、布帛とジャージーのドッキング、ジャージーパンツなどきれいめ製品の生産で差別化。シルケット加工を施した天じくやスムース、ポンチなど独自素材を開発した。生地から一貫生産できる協力工場と組み、コストメリットを出す構えだ。
カンボジアでは協力工場に自動編機を無償貸与し、ウール、カシミヤ、ラクーン、フォックスといった獣毛素材のニットを生産。ベトナムではハイゲージニットや布帛とのドッキングなど様々なアイテムに対応し、中国からの置き換えニーズに応える方針だ。
(繊研新聞本紙22年12月22日付)