【2019年・新時代をどう生きるか】レクトラ・ジャパン 田中昭彦代表取締役社長

2019/12/08 00:00 更新



カスタマイゼーションやサステイナブルへの対応などファッション業界が大きく変化する昨今。CADや自動裁断機などで知られるレクトラの裁断プラットフォーム「レクトラ・ファッションオンデマンド(FOD)」が、カスタマイゼーションやオンデマンド生産に対応するソリューションとして注目を集めている。レクトラ・ジャパンの田中昭彦社長にデジタル化の必要性や現状の課題、レクトラが考える物作りの未来像を聞いた。

◆個人のニーズに対応した生産方法

デジタル化がなぜ必要なのでしょうか

 カスタマイズに興味のあるミレニアル世代の存在やインダストリー4.0の発展、中国市場の拡大といったメガトレンドを意識しなければ、これからのメインとなる市場では戦えません。とくに我々が注目しているのはカスタマイズニーズの高まりです。ミレニアルと呼ばれる若い世代の74%、全世代でも41%がパーソナライズされた商品の購入に興味を持つというデータもあります。カスタマイズ生産において、様々な採寸データや商品情報をスムーズに生産に流すためにはデジタル化が不可欠。また、ただ便利というだけでなく、データの蓄積によるトレンド予測にも活用可能なことから、より消費者の求める製品を供給できるようになっていくでしょう。

日本におけるデジタル化の現状は

 まだまだこれからでしょう。その背景には「ファッション業界はエモーショナルな商品を取り扱っているのでデジタル化が難しい」という見方や、IT投資をコスト増と捉え、戦略的にとりいれようとする経営者の少なさが挙げられます。デジタル化による成功体験をまだ誰も享受していないので、懐疑的な見方をしている人が多いのも事実です。サプライチェーンが細分化されており全体最適が難しく、メリットを享受しにくいといった側面もあるでしょう。デジタル化が進んでいくためには、例えば商社やSPAといった企業がプラットフォームを作り、サプライチェーンの企業に参加を呼び掛けていく形などが考えられます。

◆生産の効率化とスピードアップ

販売のデジタル化は進みつつあります

 Eコマースなどの発展で、迅速な商品供給やオンデマンド生産が求められるようになってきました。その一方で生産のデジタル化が進まなければ商品供給が困難になってしまいます。レクトラの裁断プラットフォーム、レクトラ・ファッションオンデマンド(FOD)は、そうしたオンデマンド生産やメイドトゥメジャーなどカスタマイズ生産に対応するもので、採寸データなどオーダーを自動で処理する各種ソフトウェアと、最新型の1枚裁ち自動裁断機「ビルガ」を複合、量産並みのスピードで企画から裁断までを手掛けます。

 近年注目が集まる自動化の多くは生産工程の自動化で、人の手を機械に置き換えるいわば「作業の自動化」です。SMLの三サイズを一万着作るのは簡単でしょうが、一万通りの服を一着づつ一万着作ることには向いていません。FODが狙うのはプロセスの自動化です。受注からカスタマイズの定義、マーキング、裁断までをデジタルでつなぎ自動化することで、オンデマンド生産を実現します。

FODで可能になることは

 受注生産を可能にすることで、製品在庫を持つリスクがなく、環境負荷の低い無駄のない物作りにも貢献します。また、廃棄を考えないで済むことから利益を最大化することもできるでしょう。ビルガの柄合わせ裁断の精度も魅力の一つです。「無地は自動裁断機で処理していたが、柄物については手で切っている」というユーザーからも高い評価をいただいています。柄物を無地と同じように扱えることで商品バリエーションの広がりにも繋がるでしょう。そのほか一定の販売数量が見込めるサイズについては量産し、XLやXSといったサイズについてはFODを活用、オンデマンド生産により、幅広いサイズ展開も可能になります。また、サンプル作成にも効果を発揮します。

 新たなビジネスの展開やデザインの広がりなど、FODはできなかったことができるようになるソリューションです。デジタル化の促進などこれからもファッション業界の変革をサポートしていきたいですね。 


レクトラ・ファッションオンデマンドとは

 採寸データなどオーダーを自動で処理する各種ソフトウェアと、最新型の1枚裁ち自動裁断機「ビルガ」を複合したエンドトゥエンドのソリューション。クラウドベースのプラットフォームでオーダー処理や裁断データを作成。受注から裁断までを自動化し、量産並みのコスト、スピードでオーダー生産を実現していく。各国の工場や裁断機をクラウド上でつなげることで、生地の在庫状況やラインの空き具合などを計算した工場選択もできる。例えば、ユーザーが3枚のカスタマイズしたシャツを店頭でオーダーした場合、これまでは採寸データの送信から裁断が終わるまでパターン修正や型入れ、裁断データの出力、手動裁断など5人で2時間45分かかっていたものが、FODならば2人で12分と大幅な短縮が可能だ。自動裁断機ビルガのスピード感も特徴の一つ。十角形の刃が高速回転するカッターを採用。裁断の際に用いるビニールシートなどが不要で、ジャケット1着分なら5分ほどで裁断する。生地をカメラでスキャンしながら裁断するため、地の目のずれなどもその場で補整し、柄合わせ裁断も容易だ。


レクトラ・ジャパン株式会社 代表取締役社長 田中 昭彦

1967年福岡県出身

1990年一橋大学社会学部卒業

1990年松下電器産業(現パナソニック)入社

6年間のフランス駐在時代は現地法人で電機・自動車業界向けFA機器の営業責任者。その後金型ベンチャーのインクスを経て、2005年フランスのPLMベンダー、ダッソー・システムズの日本法人入社、自動車・航空業界に強く世界トップシェアの3D CAD、CATIAの日本及びアジアの営業部長・事業部長を歴任

2017年9月にレクトラ・ジャパンに入社、12月31日付で代表取締役就任

松下電器以来一貫して製造業向けの設計・製造周りのソリューション営業を担当、デジタル技術の製造業への適用、欧州と日本の製造業に対するアプローチの違いに造詣が深い

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レクトラ・ジャパン株式会社

大阪本社 06-4964-1251

東京支社 03-5215-1651

【URL】www.lectra.co.jp



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