【ニューヨーク=杉本佳子通信員】20~21年秋冬ニューヨーク・コレクションは、業界も政治も混沌(こんとん)とした状況の中で始まった。バーニーズニューヨーク、オープニングセレモニーは近々閉店が決まり、複数のファッションPR会社がなくなる。株価と最低賃金は上がり、失業率は下がり、景気は良いが、ファッション業界はその恩恵を得られていない。
11月の大統領選に向けて始まった民主党候補者選びは迷走している。このまま景気が良い状況が続けば、トランプ大統領再選の可能性は高いだろう。元来、民主党びいきの米ファッション業界にとっては、陰鬱(いんうつ)の種がつきない。
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トリー・バーチはサザビーズを会場に選んだ。ニューヨーク出身のアーティスト、フランチェスカ・ディマティオの彫刻を着想源にしたからで、陶芸を用いたカラフルでデコラティブな彫刻のまわりをモデルが歩く。力強さ、可愛らしさと繊細さ、プリミティブが入り混じった彫刻の持ち味が、コレクションにも投影された。
オープニングは、アイボリーに小花プリントをのせたパンツスーツ。ジャケットはスタンドカラーで、前にボタンをたくさん並べたクラシックなペプラムジャケット。可愛らしく上品だが、パンツの裾をロングブーツの中に押し込み、活動的な気分も入れる。
その後も白いレース、ペザントドレス、スモッキング、ふわっとしたベビーピンクのセーター、フリルを飾った白い前ヨークに細いレースの縁取りを付けた大きなケープカラーと、イノセントな要素が続く。ところどころニーハイブーツを合わせたマニッシュなパンツスーツをはさんで、凛々(りり)しさも加えた。ディマティオがデザインしたカラフルで大胆なプリントと黒無地をアシンメトリーにつなぎ、接ぎ目に立体的なパーツを飾ったアーティスティックなドレスも。
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