【ロンドン=小笠原拓郎】20~21年秋冬ロンドン・コレクションは縮小傾向にあるなかで、ロンドンらしい個性を背景にした新作が登場している。プリント柄やチュールのボリューム、スパンコールのぎらぎらとした装飾など、それぞれのブランドの得意とするラインをベースに、どう変化させていくかが問われている。いくつかのブランドは、初めてメンズラインを出した。ウィメンズとの共通の素材やディテールを生かしたメンズを揃えている。
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シモーン・ロシャは、海のモチーフと生命の誕生からイメージして、繊細なパーツを重ねながら力強いコレクションを作った。
白いレースにコットンスモック、素朴なアランニットのパーツが重なり、揺れ、その風合いにラメツイードやビジュー刺繍が輝きを添える。テーラードジャケットの胸元に切れ込みを入れテープ状の布を通すようにして、中に着たブラトップとシンクロさせていく。テープ状の布、アランニットの断片、チュールのタブリエと、いくつものパーツが組み合わさりながら、繊細さの中に厳かな力を醸し出す。
前シーズンに強調したナチュラルな流れを発展させながら、パーツのミックスで独特の世界を作っている。パーツを重ね再構築していくという手法自体、川久保(コムデギャルソン)チルドレンのシモーンらしい発想。そこにアイルランドを背景にしながら、母となり命を育んできたシモーンの感性が厚みを持たせていく。「誕生、生命、損失、すべては海から来ている。祈り」。そんなキーワードと、大きな真珠のオブジェを包み込むフィッシュネットのバッグが重なり合う。
(写真=大原広和)
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