《ニュースサクサク》19SSコレクションのキーワード

2019/01/03 06:30 更新


 19年春夏コレクションは、欧米も東京も多様性がキーワードになった。ジェンダーや国籍、肌の色、体形、年齢、職業。多様な生き方や人間性を認め合おうとする動きが世界的に広まるなか、モデルの容姿やヘアメイクを通して多様性を魅力的に発信するブランドが増えた。

 様々な垣根が取り払われて、ファッションの自由度がぐっと高まった。

(青木規子)

 00年代中盤から10年代中盤までの海外のファッションウィークを振り返ると、多くのブランドが華奢(きゃしゃ)な白人モデルを多用する傾向が強かったように思う。スーパーモデル全盛期のような個性はなく、モデルのスタイルや髪型を統一して服を際立たせるブランドが多かった。

 そういった流れがここ4、5年はどんどん変化して、個性派モデルを起用するブランドが増えた。ピンクのロングヘア、ベリーショート、ファニーフェイス。そんなモデルがファーストルックに登場する機会も増えた。

♦アンドロジナスな坊主頭

 19年春夏は、特に坊主頭のモデルが急増した。ジェンダーレス、ジェンダーフルイド(流動性のある性差)、デュアルセクシュアリティー(両性性)といった言葉が浮上するなか、フェミニニティーを感じさせないアンドロジナスな坊主頭が、今の気分にフィットするというわけだ。

 「セリーヌ」は、坊主頭のモデルにドレッシーなヘッドドレスやチュールのドレスを組み合わせて、髪型とアイテムのコントラストを際立たせた。「MSGM」は、ピンクの花柄のドレスを、ピンクの坊主頭のモデルにスタイリング。デュアルセクシュアリティーを感じるスタイルに仕上げた。

セリーヌ
MSGM

 ジェンダーフルイドを感じさせるヘアスタイルとして、オールバックも広がった。ロングヘアやボブの髪をオイルやジェルでしっかりとなでつけ、後ろに流す。おでこを大胆に出し、きりりとした眉毛を見せることで男性的な強さを演出するブランドが多かった。

 雰囲気だけアンドロジナスなモデルはもちろん、今シーズンはLGBT(性的少数者)のモデルも起用していると宣言するブランドもあった。

♦目立つ黒人モデルの起用

 6月の19年春夏パリ・メンズコレクションで、ヴァージル・アブローによる初の「ルイ・ヴィトン」は、様々なルーツを持つモデルを抜擢(ばってき)した。

 北米や欧州はもちろん、アフリカ、中東、南米、インド、中国、オーストラリア、日本などほとんどの土地がそのルーツに含まれた。その場所をリリースに記して、多くの人が人種を超えてともにコレクションを作っていることを表示した。ルイ・ヴィトン初の黒人デザイナーが示した社会に対する姿勢だ。

クロエ

 19年春夏レディスコレクションでも、幅広い人種のモデルが起用された。特に目立ったのは黒人モデル。黄色人種のモデルよりも圧倒的に多かった。その多くも坊主頭だ。きれいな曲線を描く丸くて小さな頭と黒い顔は、淡い色の繊細なドレスとの相性が良く、ラグジュアリーブランドもこぞってファーストルックに起用した。

ヴァレンティノ

 ここ数年で、ヒジャブをまとったイスラム圏のモデルも目にするようになった。特に目立つのはミラノ・コレクション。「マックスマーラ」が継続的に起用し続けている。

♦ホテルを舞台に違いを表現

 人の違いは、国籍や肌の色だけではない。年齢も違えば、体形も職も生き方も違う。シューズとバッグの「ロジェ・ヴィヴィエ」は、その違いに着目して19年春夏のプレゼンテーションを行った。テーマは「ホテル・ヴィヴィエ」。大きな邸宅をホテルに見立てて、そこで生活する女性たちを個性的に描いた。

 鏡張りの部屋で踊り続ける双子のダンサー、ゴージャスでふくよかなオペラシンガー、たくさんの鳥を飼う優雅な雰囲気の女主人。年齢も容姿も全く違う女性たちを通して、ブランドが想像する幅広い女性像をわかりやすく表現した。

「ロジェ・ヴィヴィエ」のプレゼンテーション。ホテルの女主人を演じるマダム

 ホテルを舞台にしたプレゼンテーションは、東京でも見られた。レディスブランドの「ダラス」が、渋谷のマスタードホテルの3部屋を使って、3人の女性を主役にしたプレゼンテーションを行った。イノセントな10代、バリバリ働く神経質な女性、自由奔放なアーティスト。その全員に新作を着せて、多様なダラスのスタイルを表現した。

(ヘアスタイルの写真=大原広和)

(繊研新聞本紙11月26日付)



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