19~20年秋冬はデザイナービジネスの大きな節目

2019/07/15 06:27 更新


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 19~20年秋冬デザイナーコレクションは、デザイナービジネスにおける節目という印象が強かった。特にカール・ラガーフェルドの死去は、それを象徴する出来事。一方で、サステイナブル(持続可能な)を意識したコレクションがさらに増え、次の時代に向けてポジティブなムードの高まるシーズンとなった。

(青木規子)

カールの不在

 ミラノ・コレクション前日、カールの死去を知らせるニュースが世界を駆け抜けた。数日後に開かれた「フェンディ」やパリ終盤の「シャネル」のショーでは、カールの最後の仕事が注目され、そこかしこで逸話が語られるなど、シーズンを通して話題が尽きなかった。

 フェンディでは、ブランドとの親密さが浮き彫りになった。就任した65年から50年以上、デザインし続けてきただけあって、カール不在のショー後のオフィスでは多くのスタッフが喪に服していた。体調を崩しているにもかかわらず、亡くなる数日前まで、電話で会場の色決めなどショーの最終調整を行っていたといい、最後まで真摯(しんし)に物作りに向き合う姿勢が伝えられた。

 その後、ファッションウィーク中の街中では、カールを表紙にした雑誌のポスターをいくつも目にした。「今や私はラコステのワニのようなもの」「私のことは忘れてほしい」など、彼が残した言葉はファッションの巨匠に似つかわしくなく、どこか悲哀を感じさせる。歴史あるブランドのディレクションを遂行するために、個性を抑えることも少なくなかったに違いない。そんな抑制の利いた人柄が長く愛された理由かもしれない。

逝去後、多くの媒体がカール・ラガーフェルドを追悼企画を組んだ

社会を反映する

 サステイナブルをチャレンジ目標に掲げるブランドが年々増えるなか、今シーズンは具体的な提案が目立った。持続可能な社会を目指す英国や北欧を中心に、デザイナーやファッションウィークの運営団体が発信を強化した。

 皮切りになったのは、1月のロンドン・メンズコレクション。若手の注目株ベザニー・ウィリアムスが社会へのアプローチを強めた。リサイクルやオーガニック素材を使うのはもちろん、薬物中毒更生施設内の工場で生産し、縫製は英国の刑務所内の工場で行うなど、具体的な動きが評価され、英国ファッション協議会による「英国デザイン・クイーン・エリザベスⅡアワード」を受賞した。その後、1月末のコペンハーゲン・ファッションウィークは、「サステイナブル化」を宣言した。

 2月のロンドン・レディスコレクションは前シーズンに引き続き、公式スケジュールに参加するブランドは全て、ファーフリーを徹底。ファーフリーがサステイナブルかどうかは継続課題だが、団体としていち早く変化する意志を表明した。会期中の温暖化をテーマにしたパネルトークでは、若いデザイナーらがそれぞれの意見を表明した。

 バーニーズニューヨークの鈴木春ファッションディレクターは、「ニューヨークでは地域で生産し、生産工程を減らす動きもある。今、避けては通れないところに挑戦している点が興味深い。私たちも単なる衣料品店ではなく、ファッションである以上、時代を反映していかなければいけないと感じる」という。リステアの柴田麻衣子クリエイティブディレクターは、「古いリアルファーのコートをカスタムしてデザイナーが新しく作り直す取り組みなどいろんな形のサステイナブルが出てきた。消費が進むなかで、大切にするという切り口は腑(ふ)に落ちた。ファーの有り方を考えるヒントになりそう」と語った。

ネオンで新味

 服のデザインそのものは大きく変化せず、色柄や素材で新味をプラスする。そんな表現が年々強まるなか、今シーズンはブラックライトによる演出が目立った。暗闇の中で白やネオンカラーが光を放つライティングで、90年代前後のクラブカルチャーや未来的なムードをプラスした。

 ブラックライトを効果的に使ったのは「サンローラン」。艶やかなドレスに続いて、後半は漆黒の空間でネオンカラーのミニスタイルを披露した。グリーンやピンクの鮮やかな色が発光して、エレガンスにポップなムードを加えた。

 「マリーン・セル」は会場の洞窟を、ブラックライトで照らした。ひんやりした暗闇と、怪しく光るネオンカラー。そのコントラストで、独特なストリートテイストを近未来的に彩った。この洞窟は、普段はクラブとして使われている。90年代前後の派手な夜遊びのノリが散りばめられた。

 パリに続き東京コレクションでも、ブラックライトの演出を取り入れるブランドが目を引いた。店頭やイベントなどでも取り入れられそうだ。

「サンローラン」19~20年秋冬コレクション(大原広和写す)

(繊研新聞本紙19年5月13日付)


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