【フィレンツェ=小笠原拓郎】19~20年秋冬メンズ市場の動向を占うピッティ・イマージネ・ウオモは、ビジネスウェアの需要の変化を背景に新しい提案が相次いだ。恒例の招待デザイナーのコレクションは、例年に比べるとやや少なめ。メインの招待デザイナーに選ばれたのはパリでコンセプチュアルなコレクションを見せてきた「Yプロジェクト」だ。
サンタマリア・ノヴェッラ教会の入り口で、観客は懐中電灯を手渡される。Yプロジェクトのショー会場になったのは夜の教会の回廊だ。真っ暗な中、懐中電灯の小さな光が揺れる回廊を歩くメンズとレディスのモデルたちは、どこか幻想的でロマンティックなムードが漂う。
秋冬コレクションもYプロジェクトらしいコンセプチュアルな造形のデザインがいっぱい。襟がたるむように膨らんだトップ、マルチポケットを重ねたパンツ、フロント合わせがずれてゆがんだラペルのコートなど、これまでも使ったテクニックのアイテムが登場する。
モヘヤジャカードのボリュームセーターはゆったりとした量感、カットジャカードのトップやカットジャカードのようにスラッシュを入れたトップも上品でエレガント。これまでコンセプチュアルで造形的なデザインが前面に出ていたのに対して、秋冬はそのテクニックを生かしながら柔らかで洗練された雰囲気に仕上げている。
オーガンディを重ねたストライプのカフタンシャツは透明感とともにサイケデリックな見え方、放射状にドレープを寄せたドレスもグラフィカルでありながら立体的に見せた。フィナーレは、回廊の中庭にモデルたちが勢ぞろい。歴史ある空間とコンセプチュアルなラインのコントラストが映えた。

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ピッティ・ウオモの期間中、フィレンツェ市内では様々な関連イベントが開催された。初日にはグッチが新しいグッチガーデンの空間を披露。「アンドロジナスマインド、エクレクティックボディー」と題して、編集したアーカイブを見せた。
他の招待デザイナーイベントでは、ジョン・クーンがクリエイティブ・ディレクターの「ハキュラ」と「アルドマリアカミーロ」がそれぞれショーをした。「ハキュラ」はグラフィティーアートを背景に、ストリートスタイルのメンズとレディスを見せた。