東コレ18春夏 パワフルな若手が続々

2017/10/18 04:30 更新


 海外発表組の人気ブランドの凱旋(がいせん)ショーがなにかと話題になっているアマゾン・ファッション・ウィーク東京18年春夏だが、若手ブランドによるショーにもパワフルな発表が多く、いつにも増して豊作だ。各ブランドが切磋琢磨しながらめきめき力を付けており、東京の次を担うのは自分だとアピールする姿が頼もしい。

(五十君花実)

【関連記事】東コレ開幕  注目ブランド「アキコアオキ」に聞く

 ここ数シーズン、精度を高めるために展示会での発表に切り替えていたリョウタムラカミ(村上亮太)が、パルコの支援で公式スケジュールに帰ってきた。これまでは母親と共にデザインしていたが、今季からは一人。母と息子のデュオという異色さや、ノスタルジーを強く感じさせるデザインから〝色物〟として見られることもあったが、そんな状況も逆手にとって、エレガンスの王道に遊び心を散りばめたパワフルなショーを見せた。サファリジャケットにハートモチーフのウエストポーチ、リボンをはぎ合わせたミニドレスなど、イヴ・サンローランへのオマージュを感じさせるアイテムが並ぶ。半身のジャケットでベアトップを抑え込むスタイルや、コルセット風のスカートなど、トレンド要素も盛り込んだ。といっても、隙のないキメキメな服というわけではなく、アップリケで描く若葉やリンゴ柄、落書きタッチのプリントなどでバランスを崩していく。ハイライトは、頭上に大きな壺(つぼ)を掲げたモデルが着るニットドレス。ジャカードの編み柄で、同じく壺を掲げた女性のイラストが描かれる。古代ギリシャの出土品の壺に描かれた水くみ女性を思わせるが、その脱力したタッチに笑ってしまう。〝アートを着る〟の、東京流ポップな落とし込みだ。

リョウタムラカミ
リョウタムラカミ


 ショーデビューして2シーズン目のヨウヘイ・オオノ(大野陽平)は、前シーズンのインダストリアルな雰囲気からぐっとフェミニンでプレイフルになった。それでもやはり、素材選びや違和感を挟み込むようなディテールからは人工的なムードがあふれ出し、このブランドらしさを主張する。体のラインをなだらかになぞる膝下丈のドレスに、高い位置で締めたベルトから裾が広がり揺れるドレス。シルエットはエレガントだが、そこに登山用ロープを使ったドローストリングや、丸や四角といった積み木を思わせるカットを持ち込んで遊びを加える。丸く大きく膨らんだ袖は、布を折り畳んで蛇腹にして作っており、カカオ豆風の形状のバッグにも同じアイデアが生かされている。ところどころ赤い毛足が飛び出したヒヨコのような黄色のシャギーニット、ポルカドット柄なども楽しさにつながる。「東急ハンズに行ってワクワクするような、作ることの喜びを純粋に表現したかった」と大野。「有名ブランドのコラボレーションや誰が着たかばかりが話題になる中で、ファッションデザイナーって一体何だろうと思って」と、業界の世相に対するアイロニーもチクリ。

ヨウヘイ・オオノ
ヨウヘイ・オオノ

(写真=加茂ヒロユキ、大原広和)



この記事に関連する記事