【パリ=小笠原拓郎、青木規子】18~19年秋冬レディスコレクションは、いよいよ舞台をパリへと移した。他都市のコレクションが勢いを失う中で、中核ブランドを集めてパリ一極集中ともいえる状況が続いている。これまで序盤は若手が中心となっていたが、スケジュールの変更でビッグブランドも相次いで新作を披露した。
(写真=大原広和)
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エッフェル塔を望むトロカデロ広場に巨大なテントが張られ、零下5度の寒空の下、たくさんのライトが周辺を明るく照らす。午後8時、エッフェル塔が明滅し始める時刻に合わせて、会場内のライトが光のウェーブを作り出す。
アンソニー・ヴァカレロによるサンローランの新作は、ヴァカレロらしい官能的なラインが勢ぞろいした。黒、光沢、ミニ、レザー、ベルベット、帽子。ヴァカレロのアイコンであり、サンローランの共通するアイコンでもあるいくつかの要素を散りばめて、若々しい女性像を描く。極端なショートパンツ、ラメのジャケット、フリルが揺れるブラウスにタッセル飾り。スクエアショルダーのジャケットなどトップのボリュームと、マイクロボトムがコントラストを作る。ファートリミングのベアトップドレスがセンシュアルなムードを作り、曲線的に布を立たせたミニドレスが造形のフォルムを生み出す。ラメグレンチェックのコートやジャケットでマスキュリンのエッセンスを少しだけ垂らして、パゴタスリーブのドレスが強さを加える。
メンズは細身で、やはり若いイメージ。ブーツカットのパンツに合わせたショート丈のジャケットやベルベットのスーツが揃う。
フィナーレは黒から一転、鮮やかな花柄のビジュードレスがいっぱい。前シーズン、イヴ・サンローランのアーカイブを背景にした造形ドレスを見せたヴァカレロだが、秋冬はイヴの時代のサンローランを思い出すものはわずか。エディ・スリマン以降の若いサンローランの流れを踏襲するかのようなコレクションに映った。エディほどロリータ風ではなく、大人っぽさと官能性を強調するのがヴァカレロの特徴ではあるが。
時代は移り、顧客層もブランディングも大きく変わったサンローラン。今さら、イヴの時代を懐かしむのも懐古趣味なのかもしれないが、サンローランの持つエレガンスについて、どうしてもあの時代と比べてしまう。ヴァカレロのコレクションの良しあしにかかわらず、彼はそういう呪縛を背負わざるを得ない。