【BP】商品で世界中の人と会話したい

2014/10/31 00:00 更新


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 ”ストリートフォーマル”がコンセプトの「スナイデル」、百貨店にしかなかった寝巻きをデザートのような”別腹感覚”で楽しめる「ジェラートピケ」。次々と湧き出るアイデアで、新市場を創っている。
 売り上げは右肩上がり。14年8月期でマッシュスタイルラボが249億円、中国などの海外売り上げや、「ミラオーウェン」、「コスメキッチン」、「ウサギオンライン」などグループ会社を合わせて428億円と成長している。いまや“一人勝ち”と言われるほどに20~30代の婦人服をリードし、次は何かと注目する同業者も多い。
 近藤広幸社長は、建築デザイン出身。マッシュスタイルラボも、グラフィックデザイン会社として創業した。自らを「根っからのあまのじゃく」と言うように、ファッション業界の既成概念に捉われず、自由な発想で盲点を突く。既成の“つまらないこと”を面白くしてやろうという好奇心にあふれる。

 

3年はお金がかかるやり方でベスト尽くす

 

─スナイデルは「ストリートフォーマル」、ジェラートピケは「大人のデザート」など、分かりやすい言葉選び、コンセプト立てのセンスが光る。

 

 自分がブランドディレクターほど細かく仕事が出来ないから、プロデューサー的立ち位置でいる。そうすると、デザイナーチームに端的にコンセプトを伝えないといけない。ブランドの芯を表す部分、その一言が出てこないとブランドは作らない。

 デザイナーに伝わりやすく、思考が迷子になった時に立ち返る家のような一言、フィロソフィーが大事。言葉はストレートに、お客さんが求めているはずのことを一つの言葉で表すようにしている。

 

─物作りに投資する会社だ。

 

 いいかどうかは置いておいて、うちは外部からベテランを入れて、チーフに据えてやるブランドは全くない。そうすると、仕事をしながら一流のデザイナーに育つには、通常のデザイナーよりも何倍もの経験が必要になる。

 うちは、サンプル代は年間で各ブランド1億円をかけ、各色製品まで作るのが当たり前。不安の中でお客さんに提供するよりも、社員がチャレンジしてデザインし、全色見て納得するまでやりきる。経費削減ももちろん必要だが、ブランド立ち上げから3~5年は、お金がかかるやり方でベストを尽くす。

 不器用な経営だけれど、なるべくストレスのないデザイン環境を整えたい。展示会前の検討会でも、ベストなものを真剣に選んだ5色の中から、断腸の思いで3色に絞っている。そのこだわりはきっとお客に伝わっている。

 


中国・上海で行ったショー


ニーズが減った?ならばよりオーラが出る服を

 

─どのブランドも順風満帆でなく、様々な修正を重ねて成長してきた。

 

 ブランドが利益を得られるまで3年はかかる。それまで経営者が我慢できるかどうかだ。社員に絶対うまくいくと言い続け、チームに勇気を持たせ、赤字でも投資し続けるのは、自分が思いついてしっかり納得したことだから。

 例えば「リリーブラウン」は、原価率58%から始めて3年かけて30%台後半にした。3年間で反省点をたくさん蓄積した強いチームの頑張りがお客やメディアに伝わり、数字もぐっと上がりだす。そこは投資と思っている。

 「スナイデル」「ジェラートピケ」は高収益事業。でも、「フレイアイディー」、リリーブラウンは投資額を回収しきるにはまだこれからだ。

 うちの人数、売り上げと同水準のほかの会社なら、利益額は2倍かも知れない。でも、必要以上に経費を抑えず、社員が目をキラキラさせて働けるやりがいを追求したい。

 ブランドを育てることに、経営者はタッチしなくていい。それよりも、強いチームが築けているかを考え、そのために声を掛け、人を育てる気持ちが重要だと思う。

 

─都心型ブランドにこだわるのはなぜ?

 

 それしか詳しくないから。「スナイデル」を通してファッションに携わって10年しかない。都心型市場について、マーケティングし、ニーズを探り、お客の顔を想像するなど、そこに集中して全力で勉強してきた。

 現場にニーズがあるから、そこの市場しか勉強できない。違うマーケットを勉強する時間がないし、人から聞いた分析は半信半疑で聞くようにしている。あまのじゃくだからね。

 

─服を売ることに自信を失っている経営者が多い。

 

 僕には分からないな。服は衣食住の一つで、先進国はこの3つを向上させて人生をどれだけ豊かにするか。自分たちはそれをサポートする仕事だと思っている。

 洋服へのニーズが減っているならば、だからこそ、より魅力的でオーラが出る服を作らなきゃと思う。物を作る人に愛情を注ぎ、商品に自信を持ち、センスも教育してきた。そこをもっと強化しなきゃいけないという使命感がある。

 


展示会準備の光景。和やかなムードながら納得いくまでとことん、がマッシュ流

プレスのミーティング。カタログやショッパー、ブランドロゴまで全て自社でデザイン


とにかく喜ばせたい一心がそこにある 

 

─もっと高い服に興味はないか?

 

 とにかく人を喜ばせたい一心でやっている。なかったものを形にし、そうそうこんなの欲しかったと喜ばせたい。高いことで与えられる喜びって何だろう?自分の中で、そこで満面の笑みが得られるようなイメージがわかない。売れるものはこうだと思ってブランドを作っていない。こういうニーズがあるはず、そこを起点にしている。

 

─「スナイデル」立ち上げ当初は、サンプルを見ながら見た目で値付けしていた。

 

 物を見て「○○円!」って値段をつけるやり方は、まさに今(グループ会社が今春立ち上げた)「ミラオーウェン」でやってますよ。立ち上げ1年間は、全て自分がそうやって値付けしている。その肌感覚を覚えた人たちが、これからのブランドを作っていくんです。

 価格を決めるのってものすごく大事で、プロデューサーとして最も大事な仕事の一つ。下代(卸価格)ありきで値付けすると、どういう人たちを喜ばせたいのか、最初の思いを見失っちゃう。だから、当事者じゃない社内の女性を連れてきて感想を聞いたりはよくやるよね。

 

─グループ売上高428億円は、想定通り?

 

 こんなに大きくなるなんて全く考えていなかった。行き当たりばったり。思いついちゃったから、やるしかないとここまできた。会社の将来像は、僕が考えることじゃないんじゃないかな。僕や社員の思いつきの回数が減らなければ、会社は少しずつ大きくなっていく。謙虚に、チャレンジ精神を持って。

 将来的には、資金をとことん蓄えた状態で、米国で利益を出したい。米中日のファッション市場の売り上げがダントツで、たまたま3位の日本にいる。中国、米国でもディベロッパーとウィンウィンの関係を築き、商売を成り立たせたい。

 自分は色んな言語が話せるわけじゃないから、言葉が通じないところに表現で通用するか、挑みたい。商品で世界中の人と会話する、そこにロマンを感じますね。

 

(繊研新聞の連載「型破り!マッシュスタイルラボ」(全10回、10月20~31日掲載)より繊研plus版として掲載しました。=繊研新聞のお申込はこちら

 


社員から誕生日にプレゼントされた絵と近藤社長 


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