《淘汰の時代を生き抜くために ファッションビジネスは今、何をすべきか》澤田宏太郎ゾゾ社長兼CEOに聞く㊤ 原点回帰で「みんなのゾゾ」を
「ファッション好きのテクノロジー集団を強みに、開発機能やサービスをインフラとしてオープンにし、オン・オフ全方位でファッション産業に貢献していく」。ゾゾの澤田宏太郎社長兼CEO(最高経営責任者)は、新しい経営方針について、そう話す。EC領域を超え、オフラインの実店舗を支援する機能を20年中に複数提供する。ファッション業界の課題である最適な生産数量の予測や個客と商品のマッチング、サイズのパーソナライズ化、〝似合う〟の研究をさらに進め、ファッション業界のインフラを目指す。
(疋田優)
【関連記事】ゾゾ、ヤフー傘下に 前澤社長は退任、新社長に澤田取締役
■信頼と期待を改めて確認
社長就任から5カ月。今は社員全員が「成長するチャンス」ととらえる。出店企業やブランドとの信頼関係も好調という。
昨年9月の突然の創業者退任には当然、社内は動揺しました。ただ直後に「社員が主役」を掲げ、「一人ひとりが成長する機会」と訴え、多くの社員はすぐに地に足がつき、離反もほぼ出ませんでした。
12月にペイペイモール(PPM)へゾゾタウンを出店。9割弱ものゾゾタウン出店ブランドに参加いただき、改めてゾゾの強みは「ブランドとの信頼関係」だと社員全員が共有できました。PPM出店の前には、取引先約20社に私もあいさつに出向き、ARIGATOサービス終了に伴う経緯や新モール出店の価値を丁寧に説明しました。取引先からは「トップ交代でゾゾがどうなるのか見えない」という不安が語られる中で、期待も強かった。一時は〝ゾゾ離れ〟報道でお騒がせしましたが、反省点は忘れず次のステージへ全力で走ります。
新しいゾゾは「業界のインフラ化」を目指し、あらゆるブランドのオンライン・オフラインを支援していくと宣言する。
20年は「ZOZOイヤー」とし、「ファッション業界を盛り上げ、ブランドの様々な課題を解決するリード役となること」を強く発信します。新サイト「シンク・ゾゾ」もその一環。私たちの「ファッション好き×テクノロジー集団」を強みに、全方位で業界を支援するため、今年中に複数の新サービスを実現します。
大きな事業方針は①ゾゾタウン、PPM、中国ゾゾ、「ウェア」の各EC・メディア媒体の成長②様々な商品カテゴリー強化③業界とブランド支援メニューの強化――です。これまでのゾゾは、一つのサービスを磨き、積み上げ、自社の価値を高めてきましたが、これからはゾゾの事業全体をオープン化し、ファッションブランド・小売りに大いに活用してもらいます。
■2モールはすみ分けへ
現在のゾゾタウンとPPMはほぼ同一ブランド・商品を販売しているが、今後はゾゾタウンはファッション好きを対象に原点回帰し、すみ分ける。
EC事業は、ゾゾタウン、PPM、中国ゾゾが3本柱で、それぞれターゲットを明確にしていきます。
当社が分析した10~50代の国内ファッション人口分布では、服好きで情報・スタイルを自主的に選ぶ人の割合は15%で、ファッション消費の2兆2000億円分を支えています。次にファッションに関心があって価格次第の層が50%で2兆7000億円を使い、残り35%が価格基準でこだわりを持たない層です。近年ゾゾタウンは大きな層である50%を取り込むことに注力してきましたが、その結果、上下15%を取り切れずさまよっている。そこでゾゾタウンは感度の高い15%を取りにいき、PPMで50%以下の15%を取り込み、全体で客層を増やします。
一方で、ターゲットは明確に分ける。ゾゾタウンはファッション好きが喜ぶコンテンツを強化し、パーソナライズ提案も強めます。PPMは予想通り30~40代が強く、ゾゾタウンより男性購入が多い。ブランドには両サイトを自由に選んでいただきたい。ゆくゆくは自然とすみ分けができ、役割も分かれていくと考えています。
加えて、ゾゾタウンでは個客ごとにサイト表示をパーソナライズ化します。これまではゾゾスーツやPBに開発リソースが割かれていましたが、レコメンド機能の精度アップを進め、今年中にはゾゾタウンが変わります。
(㊦に続く)