〝ピッティ男〟たちが再び中央の広場を埋めつくした第103回ピッティ・イマージネ・ウオモ。パンデミック直後に比べると出展や来客数は戻り、かつてのにぎわいを思い起こさせた。
(ライター・益井祐)
新設はペットセクション
ゲストデザイナーとして迎えられた「マーティン・ローズ」と「ヤン・ヤン・ヴァン・エシュ」のショーのほかにも、いくつかのフィジカルイベントが開催された。
初出展となった「シャトー・オルランド」では、クリエイティブディレクターである人気アーティストでデザイナーのルーク・エドワード・ホールが来場した。
コレクションのインスピレーションは、旅行先の英国南西地方コンウォール。教会で見たタペストリーのパターンがニットに落とし込まれたり、おとぎ話がプリントでつづられたり。本人がよく着るというビンテージが基本的なシルエットのアイデアになっているという。
コンテンポラリーアウトドアのエリアに移動したのは、フィンランドの「ロルフ・エクロス」。アウターや中わた入りアイテムを得意とするブランドだ。2枚の生地を重ねてパッチワークしたジャンプスーツは、一枚一枚カットして中の色を見せるデザイン。折りたたみばさみとの協業だとか。
今回のピッティでは三つの新しいカテゴリーが紹介されていた。
「ザ・サイン」には面白みのあるライフスタイルグッズが並んだ。中でもウケたのは「ホーリーポップ」。ミスタースポックやET、さらにはローカルのセレブなどをモチーフに、教会などにある聖水入れがデジタルプリントでポップに生まれ変わった。ブランドのベースはもちろんローマ、生産も近郊で行われている。ちなみに写真を送れば自作のデザインも作れるらしい。
昨今のペットグッズ需要の高まりに目をつけたのか、「ピッティ・ペッツ」というセクションが新設された。
上質レザーを使ったリードを大人なデザインのボンテージ風に仕上げたのは「ボールデル」。「MJOドッグ」のリードは和柄に赤いチェーン、ビニール袋を入れるポーチもオプションで付いてくる。お向かいではワンチャン写真展も開かれていた。
ビンテージやブランド古着も
「ビンテージ・ハブ」ではイタリア中から九つのビンテージショップが参加。アンティークコスチュームからミリタリーアイテム、そしてブランド古着を即売していた。
ビンテージといえば忘れてはいけないのが、ピッティも力を入れているサステイナビリティー(持続可能性)だ。「Sスタイル」ではモデルを使ったプレゼンテーションが行われたほか、シアターではトークも開かれた。
そのパネルの一人がアムステルダム発の「ケムケス」。再生やデッドストック素材の他に、多くのデザインがスナップボタンによる開閉や脱着でマルチな着こなしができるようになっていた。
ノルウェー発の「ウェスト・ヤーン・プロジェクト」は前回に続き2回目の出展。サイコロで組み合わせるパターンを決めるボーダー柄のセーターを提案していた。
ロンドンを拠点にするフランス人の「マキシム」は、シーズンごとに確実に実力を上げている。新作は、トレードマークにあるように、デザインの根底にある家のイメージ。北ロンドンのストックニューウィントンにある古びた屋敷をテーマにした。
ステンカラーコートの生地で床のパネルを表現、サテンのトップには天井飾りが刺繍された。ダブルフェイスのコートをはじめ上質な素材選びもブランドの強みだ。
ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションのMAを卒業した中国人デザイナー「パーミュ」はユニークなテーラーリングをサステイナブルに。ベニスから参加した「ピウム・ステューディオ」は中わた入りブーツで再生素材を使用。どちらもパンデミック中にブランドを発表した。