【特集】大人レディス市場の注目ブランド戦略

2017/08/03 15:00 更新


“うっとりするベーシック”で、全ての女性のファッションを楽しく / ミラ オーウェン 

 マッシュスタイルラボのレディスブランド「ミラオーウェン」は、“ネクストベーシック” “ロープライスラグジュアリー”を掲げ幅広いファンをつかんでいる。ファッション好きも低予算派も満足させる商品力を武器に、出店エリアを全国に広げていく。(繊研新聞・7月20日付タブロイドより)



17年秋物も新しいディテールやフォルムを取り入れ、進化したネクストベーシックを表現する 


 デビューからの約3年半は、「より良い素材、縫製、パターンをロープライスで提供するための勉強を重ね、ものづくりをレベルアップさせてきた」と井木秀香ディレクター。

 大切にしているのは「うっとりするベーシック」。コストパフォーマンスに加えて、さりげないトレンドの入れ方や女性をきれいにみせるデザイン・シルエットにもこだわる。メインターゲットは30~40代だが、「どんな女性に着てもらってもうれしい」。

 これまでに、「ミラオーウェンに行けばこれがある」と思ってもらえる象徴的なアイテムをいくつも開発してきた。パンツはパターンの良しあしがはっきりと出るアイテムだが、デビュー時から評価が高い。ハイゲージのニットウェアはとことん目のきれいさにこだわるという強い思いで、長く愛用してもらえるアイテムを追求している。より多くの女性に向け、今秋冬からサイズ展開も増やす。

 特にファンが増えているのがデニム商品だ。7800 円、8800 円を軸に販売しているデニムパンツはメーカーや工場と協力し、岡山の素材、強い打ち込みによるしっかりした風合いにこだわる。デニムラインは「ミラオーウェンデニム」として店頭やホームページでも積極的にアピールし、16 ~ 17年秋冬は前秋冬比で売り上げが5倍以上に伸びた。

 「デニム商品に対する信頼が、ブランド全体にも波及している」と感じている。定番の安心感だけでなく、リピーターを飽きさせない進化も続けている。



毎シーズン、新作を発売している「ミラオーウェンデニム」


 女性の気分を先読みし時代の半歩先を提案するのが、ミラオーウェンの考えるネクストベーシックだ。


出店先を広げ全国的なブランドへ

 ミラオーウェンは同社の中でも特に出店攻勢をかけている。現在の店舗数は国内33店舗。17年秋はルミネ新宿・ルミネ2の1号店をリニューアルし、10店舗弱の新規出店も予定する。ファッションビルや百貨店を中心に今後も出店を増やし、より多くの女性たちのファッションを応援する。



新しい内装の店舗も増やしている


商品デザインの幅を広げ、モード系キャリアのナンバーワンブランドへ / トーナル

 エムファーストの「トーナル」は17~18 年秋冬、モード系レディスキャリアブランドとしての第2ステージに挑戦する。15 年春夏のスタート以降、売れる商品や出店立地などブランドの方向性が定まり実績も付いてきたとし、トレンド感も取り入れつつ、デザインの幅を広げる。新規客獲得やファン作りの仕掛けも行う。




 トーナルの商品は、きれいめだがコンサバすぎないこなれたデザインや、ウォッシャブル機能などの実用性を特徴とする。売れ筋アイテムはジャケットやブラウス、パンツのほか、最近はスカートも人気となっている。現代の20代後半~30代女性の気分に合ったキャリアブランドとして、商業施設からの出店オファーも多い。

 17 年秋には小田急百貨店新宿店、アーバンドックららぽーと豊洲、博多阪急にも出店し店舗数は11店に広がる。既存店の傾向を検証した結果、都会的なキャリア層のいる立地が最も合うと見て、今後もそうした商業施設への出店を進める。



17~18年秋冬物はトレンドのカラーやディテール、より上質な素材をブランドらしく表現。人気のジャケットはカジュアルスタイルにも合うデザイン。


 商品デザインやプロモーション面では次の施策を考えている。時間をかけてブランドの軸を固めたことで、「東京で例えるなら、丸の内や有楽町で働く女性のドレスコードにはまる商品は提案できている。

今後は、新宿や恵比寿の女性もイメージしながらデザインの幅を広げたい」(眞田隆司トーナル事業部事業部長)考えだ。17~18 年秋冬物はモード系キャリアをベースにトレンド性を加えた商品を増やし、ファッション感度を高める。



17年3月、新丸ビルにオープンした「トーナル」丸の内店


 高感度な商品企画に加え、ブランドカタログやスマートフォンアプリを活用してファンを増やす。カタログは人気モデルの小泉里子さんを起用し、トーナルの新たな一面を表現するスタイリングビジュアルを作成した。8月から店頭で配布する。

 新規導入のアプリはECと実店舗のポイントを共通化し、ブランドからのお知らせなども配信する。トーナルの魅力をさまざまな形で発信することで、働く女性にとって「使えるブランド」であることはもちろん、「一番好きなブランド」を目指していきたいという。

デザイナーインタビュー 佐藤一穂さん



デザイナー 佐藤一穂さん


 17~18年秋冬から本格的にデザインを担当しています。オフィスに着て行けることやジャケットアイテムを大切にしつつ、カラーやディテールでトレンドをほど良く取り入れました。ただし、例えばバルーンスリーブのブラウスも袖の形が大きすぎるとリアリティー

がありません。ジャケットに合うかなど、トーナルらしいトレンド表現を心がけました。

 ほかのレディス企業から当社に入社し、マーケットを見ることの大切さを改めて実感しています。企画担当者は毎月、他店や自店を回るなどリサーチを重ねており、ここがトーナルの強みでもあります。

店舗もECもユーザー目線 、前へ進む女性をファッションで後押し / マイストラーダ

 アルページュのレディスブランド「マイストラーダ」は、リアル店舗とECの両軸でブランドのファン作りを進めている。店舗は今後、アスセスの多い都心立地を対象に3、4店を出店する方針だ。



鮮度ある商品企画を通じて、大人の女性にファッションの「楽しさ」を届け続ける


出店は都市部を対象に厳選

 マイストラーダは15年春のデビュー以降、30 ~ 40 代の大人の女性に支持され、17年の販売も計画通りの推移と順調だ。これまでに6店を出店し、ブランドの客層的に都心の商業施設との相性が良いと実感している。消費者にとっての利便性を考え、今後の出店先も横浜、東京・丸の内、大阪といった都市部をイメージしている。

 将来的な店舗数は10 店程度が適正と見ており、ファッションビルでも百貨店でも成り立つブランドにする。販路によって客層は微妙に異なるが、商品は今のMD構成で対応できているという 。例えば、大人の女性が多いため仕事用のジャケットのニーズもあるが、ファッションビルならジャケットに単品スカート、百貨店ならセットアップでもジャケット単品でもと、スタイリング提案の幅でカバーする。




 商品企画全体では、鮮度のある商品の反応が良いため旬の色やデザインをブランドらしくどう表現するかも重要だ。「マイストラーダは “私の道” という意味。確立されたスタイルを持つ女性がさらに前に進むときの後押しをしたい」と野口麻衣子社長。この服があるから明日を元気に過ごせると思えるような、ファッションの楽しさを届けていく。

より濃いファンを増やす

 出店と並行して、ECの強化も進めている。まだ店舗数が少ないこともあり、現時点でもEC化率は約40%と高い。将来的にはこれを50%に引き上げ、店舗とECのトータルで25 億円のブランドに育てる。

 そのためには、店舗とEC両方を利用する顧客を増やすことがポイントだ。こうした女性はマイストラーダやアルページュの濃いファンであることが多く、客単価が高いのも特徴だ。また、ECユーザーの生活圏は店舗があるエリアと重なるなど関連が深く、EC強化は店舗の売り上げの底上げにもつながる。



自社ECサイト「アルページュストーリー」はオリジナルコンテンツを充実し、店舗への来店にもつなげる


 自社ECサイト「アルページュストーリー」では、そこでしか見られないスタイリングビジュアルなどオリジナルコンテンツを充実してユーザーとの距離を縮めている。17年春には、インスタグラマーがマイストラーダの店舗で買い物している様子を撮影したショッピングムービーを配信し、店舗やECへ誘導する仕掛けを行った。常に、「お客様が楽しんでくれるものを」という視点で新しい企画を考えている。


ブランドベーシックの確立へ / ルクールブラン




「ルクールブラン」。長く愛せるフレンチシックな定番アイテムに、トレンドをほんのり加え、上品に仕上げることでオンオフ問わず着られるウェアが揃う。

 17年春夏からは、ブランドベーシックの確立に向け、ボーダートップス、ベーシックシャツ、トレンチコートに加えデニムラインやミリタリーラインもブランドを代表するアイテムと位置づけた。素材やシルエット、発色の良さにこだわり、高品質ながら、手頃な価格も改めてアピール。店頭で常に販売することで、リピーターを増やしていきたい考えだ。




 16 年秋からは、認知度アップに向けて雑誌『LEE』と『BAILA』でタイアップを開始。今春は『LEE』の人気スタイリスト、福 田 真 琴さんとLEE 編集部とのトリプルコラボレーションで刺繍ブラウス(9900円)とリネンのワイドパンツ(1万2000円)を販売した。問い合わせの件数も増え、購買客数も大幅に伸びて新規客の獲得を実感している。

 認知度が上がっている手応えを得ているため、今後はさらにブランドの表現力を磨いていきたい考えだ。商品企画だけでなく、店頭でのVMD、SNS(交流サイト)での見せ方まで気を配り、ブランドの統一された世界観を表現していけるよう、企画やプレス、販促担当の連携を強める。



▲”COMFORTABLE ROOM”がコンセプトの神戸居留地店


レトロモダンとソフトフェミニン



「ルクールブラン」コンセプター マネージャー 兼 ブランド長  梅本 千夏子さん


 強みのパンツ、ニット、アウターに加え、今季はスカートのスタイリングも増やします。

 トレンドのレトロは、古着風のクラシカルなトップや英国調のチェック柄で表現。一方で働く女性の目線を忘れず、ミニマルシックなソフトフェミニンも提案します。ローブコートやスリットなどのディテールとやわらかい色使いで、リラックス感あるスタイルを提案します。


6つのキーワードでフェミニンを表現 / ペルルペッシュ

 フレンチクラシックをベースとした、上品でクラス感のある大人のフェミニンスタイルが特徴の「ペルルペッシュ」。60~70年代のフランス映画の女優のような、上品で女性らしいスタイルをイメージソースにしている。フェミニンの表現も、度が過ぎると甘すぎたり、子供っぽく見えてしまうため、さじ加減のバランスに気をつけながら、品良く見えるように特に気を配っている。




 17年春から強化しているのが、ブランドらしさを磨くことだ。ブランドの軸になるフェミニンを追求するため、パール、レース、リボン、ドット、花柄、ピンクという6つのキーワードを設定した。このキーワードを含む商品は、トレンドに関係なく販売することで、ブランドイメージを確立させていく。

 春はキーワードに沿った商品を展開するのみにとどまっていたが、8月からは、より分かりやすく伝えるため、キーワードごとに商品を面で見せていく。

 例えば、店頭ではラック2本に花柄アイテムを集積し、スタイリングもこれらの商品を軸に組む。同時期に EC や SNS でも花柄アイテムを特集して見せることで、ブランドの提案をぶらさずに伝える。9月はドット、10 月はリボンと月ごとにキーワードをはっきり変えることで、常にフレッシュな見え方を追求する。




いつもよりインパクトある華やかさを



「ペルルペッシュ」コンセプター チーフ 兼 ブランド長  藤山 優子さん


 オリエンタル調の花柄やグレンチェックなど、プリント物のスカートやワンピースを特に強化します。

 オリジナル柄も含め、いつもよりインパクトのある華やかなアイテムを増やしています。ファッションを楽しもうという気分が高まっていることを受け、そこに応えられるよう、カラフルな色使いなど新しい提案を積極的に仕掛けていきたいと思っています。




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