記者に記者があえて聞く!コレクションって、デザイナーって、何ですか?㊦

2020/04/23 14:59 更新


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ディレクターが変わればブランドも

 石井 クリエイティブディレクターやデザイナーとして、商業的に成功したのは誰だと思いますか。

 青木 やっぱり以前「セリーヌ」にいたフィービー・ファイロだと思います。その前には「クロエ」でバッグをヒットさせているし。

 小笠原 私は(「コムデギャルソン」の)川久保玲だと思う。「プレイ」や「ブラック」など色々なラインを作って、お金をきちんと稼ぎつつ新しいクリエイションを提案し、「ドーバーストリートマーケット」の店舗では〝売り〟を作るものと同時に若手デザイナーの紹介という役割も果たしています。

コムデギャルソン

 石井 クリエイティブディレクターが何度も変わるブランドもありますよね。ブランド名の人名とは一致していなかったり本当に複雑で覚えられない…。最近、リブランディングしたブランドはどうなったんでしょう。

 青木 セリーヌはエディ・スリマンになって、フィービーの時代とは全く違うベクトルのブランドになりました。もちろん良い物は作ってますが、以前のファンが好むものとは違う。新たな層が対象になりました。「ボッテガ・ヴェネタ」はダニエル・リーのもと、これまでよりも若い層にアプローチしている。シグネチャー的なころんとしたクラッチバッグをヒットさせて、その形は他のブランドにも影響を与えてます。

ボッテガ・ヴェネタ
「ボッテガ・ヴェネタ」のクラッチバッグ

 石井 かつては女性がこぞってセリーヌのバッグを買ったり、ちょっと前も「バレンシアガ」とか「ロエベ」のバッグは割と街で見かけましたが…。今はこのブランドのバッグを買うとおしゃれ、っていうのはどこなんでしょう。

 小笠原 確かに爆発的に人気のバッグは、最近はあまりないかな。

 青木 うーん。あ、ファッションウィーク中の空港では、「ディオール」の大きなトートバッグを持っている人をたくさん見ました。

服の売り上げの7~9割がプレコレ

 石井 最後に、話ががらっと変わるんですが、プレコレってどういう役割なんですか? 私が普段取材する企業は春夏、秋冬か、春、夏、秋、冬で展示会を開く場合が多く、その概念は基本的にないのですが。

 小笠原 プレ・コレクションのことで、春夏と秋冬のメインコレクションの前に発売されるもの。大体6月からがプレフォール、11月後半からがプレスプリング。ブランドにとってのメシのタネです。ビッグブランドだと、作り込んだメインコレクションに対して、プレコレで服の売り上げの7~9割をとっている。

 石井 え、そんなに…。

 青木 プレシーズンから立ち上がってメインシーズンに入っても売ることができるから、販売期間が長く取れるというメリットもある。もともとはメインコレクションを補完するような、シンプルで着やすいもの、価格もより手頃な物が中心だったんだけど、今はそういうものだけではなくなっている。3カ月周期で売り場を新鮮に変えていく上でも重要な存在です。

 小笠原 中国の市場も伸びているけれど、もともとプレタポルテの最大市場はアメリカ。そのアメリカではリゾートコレクションとして年末年始の前に新作を出してきた習慣があります。この国の年4回の商習慣に合わせる意味でも、プレコレを含めて1年間を回していく仕組みになっているんです。

小笠原拓郎編集委員(左)、青木規子記者
聞き手:石井久美子

(コレクション写真は20~21年秋冬、撮影は大原広和)



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