ワコールグループの物流専門会社、ワコール流通は本拠である滋賀県の守山流通センターの増築が22年1月に完成し、10月から個配業務を開始した。外部委託していたEC物流を内製化し、BtoB(企業間取引)とBtoC(企業対消費者取引)の在庫を一元化することで、どこから注文が来ても発送できるCX(顧客体験)戦略の推進と、在庫効率の向上を目指す。
約50億円を投じ、延べ床面積は約60%増の6万4000平方メートルに広がった。横幅240メートルの5層構造となる。国内や中国、タイ、ベトナムなど10の工場から入荷した商品は、RFID(ICタグ)読み取りゲートを通過後、アーム型のロボットが荷札を添付する。RFIDゲートは出庫検品、返品検品を含め計3台導入しており、返品検品効率化の効果として年間で2000時間が削減できている。
商品は垂直搬送機で上層階に運ばれる。垂直搬送機は、2点間の単純連続搬送が可能なバーチレーターを3基、多層階垂直仕分けが可能で連続搬送と自動仕分けを両立するハイトレー2基を設置している。保管フロアには、無人搬送車(AGV)を17台導入。出庫作業後の荷物をステーションに置き、垂直搬送機まで無人搬送している。EC向けに簡易包装ができる自動袋入れ機も導入した。
1時間に700枚以上仕分け
仕分けには、ゲートアソートシステム(GAS)を13台導入。BtoBで4台、BtoC個配で9台を使用している。品種やロット区分によるが、1時間あたり700枚以上の仕分けが可能になった。
出荷先は全国の百貨店、量販店、専門店、個客と様々。そのため、発送地域や発送形態が異なるトラックへの出荷作業を効率的に実施できるよう、トラックが最大30台並ぶことができるトラックバースを設置している。
動作分析ソフトを活用
昨年1月の完成後は、計画外の事態も起き、その都度改善を重ねている。昨年5月に、伏見流通センターから量販店向け「ウイング」のプロパー品を移管した際は、慣れない作業が増えて生産性が落ち、遅納を招いた。伏見流通センターはセール品に特化したことで、守山と需給の山が分かれたことから、拠点間をピストン運行することで従業員の応援体制を整えた。BtoBとBtoCの物流が混在することで作業効率が低下したことから、動作分析ソフトの活用で商品保管スペースのレイアウトなどを変更した。月1回、経営課題検討会を開き、現場の課題を洗い出している。
〈メモ〉
従業員は約600人。総取り扱い数量は2710万枚。ワコール流通全体の22年3月期売上高は33億円。「物流センターは地域密着が重要」(堤幸信社長)として、毎年地元の高校生を5~7人新卒採用している。ホームページでは仕事内容やブログなどのコンテンツを充実しており、採用に役立っている。増築を機に従業員食堂を設置するなど、働きやすい環境づくりにも取り組む。