《視点》タイパ消費

2023/01/18 06:23 更新


 タイパという言葉が話題だ。費用対効果(コスパ)と同じように、時間効率を重視する行動のこと。あらすじを手っ取り早く見せる「ファスト映画」や、ドラマ、映画を早送りで見る若者の存在が注目のきっかけになった。最近流行のJポップは前奏や間奏もなく、飽きさせないようサビまでスムーズに聞かせるという。「映画を早送りしたのでは作品を鑑賞したことにならないよ」と40代の記者は言いたくなるが、当人らには余計なお世話だろう。オンライン上には無限のコンテンツがあふれており、情報を素早く取捨選択する中で自然と身についた所作なのかもしれない。

 タイパを重視し、コンテンツの価値を素早くジャッジしていく若者が消費の主役になってくるとすれば、ファッションや小売業は今後どうなっていくのだろうか。服を選ぶ時間を極力短縮するECやショールーミングストアがますます求められるようになるのか、サブスクレンタルでころころ着せ替えていくのか。

 1月7日付の朝日新聞にあったジブリプロデューサーの鈴木敏夫さんの言葉が示唆的だ。「(映画は)観客からどう時間を盗むか」。タイパとは真逆に、時間を忘れさせるような体験を提供することも可能性の一つだ。

(恵)



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