私たちが生きている(見えている)現実とは別に、同時に存在する世界や時空をパラレルワールドという。SF物をはじめ、映画や小説、漫画などにたびたび登場するモチーフだ。
実際に存在するかはともかく、感覚的な意味でパラレルワールドが存在すると思う機会が増えた。自分が生きている世界では存在すら知らないが、別の世界に驚くような人気者がいる、すごいヒット商品がある、バズっている話題がある。
それは昔からあったようなおじさんの世界と若者の世界といった単純な区分ではない。以前なら、繁華街を歩けば誰にでも目にできたものが今は見えない。おそらくSNSの爆発的な普及によってもたらされ、しかも同じツイッターを使っている人同士もそれぞれ別の世界を見ている。
このような時代に流行を作り出すのは大変だ。極端に言うと、1億人いれば1億の、スマートフォン1台ごとのパラレルワールドが存在し、以前のようなマーケティング手法やペルソナ像なんて通用しない。
そんな別々の世界を生きる私たちが、やはり一つの同じ世界に生きていると、かろうじて実感できるのは、悲しいけれどパンデミック(世界的な大流行)や戦争、環境問題によってなのかもしれない。
(恵)