「まだ印刷の会社だと思っていません?」。最近気になっていたのが、某大手企業のCMにあった前述のフレーズだ。
同企業の情報を簡単に見ると、創業は1900年。1世紀以上の歴史を持ち、早くから異種研究者間の交流、切磋琢磨(せっさたくま)を目標に総合研究所を設け、時代の変化に対応しながら様々な分野で事業を発展・多角化している。仮想空間上に構築されたバーチャル店舗を複数集めたスマートフォンアプリも開発し、取材先のジーンズカジュアルブランドが出店した。
年初に小売業のトップを取材して特に印象に残ったのが、「自社のビジネスで同じことを続けているだけではダメ。例えば10年、15年に一度は大きく変わらなければ」という話だ。ファッションビジネス業界にも、創業期から大きく事業の内容を変え、変革を続けながら成長してきた企業は幾つもある。旧態依然が続き、事業を整理・縮小してきた企業ももちろんある。
冒頭の話題に戻るが、「あの企業はこんなことをしている」「あの分野は当社の事業とは接点がない」といった固定観念をいい意味で振り払うことも、変革には必要だと思う。自社が今持っている強みを、もっと柔軟な発想や広い視野で発揮するぐらいの構えも、企業の発展性や永続性には欠かせない。
(畔)