少し前の取材になるが、レディスブランドのデビュー当時を担当者に振り返ってもらう機会がいくつかあった。改めて思ったのは、10年、20年前から今も健在なブランドは、続くべくして続いているということだ。
毎シーズンの商品や店の変化だけを追っていてもなかなか気がつかないが、一歩引いて、そのブランドが市場に何を提供してきたか、女性たちのファッションをどう変えたかを考えると、唯一無二の価値が浮かび上がってくる。取材した各ブランドのテイストはバラバラだったが、「やっぱりすごいブランドだな」と、純粋に納得した。
ファッションを通じてそれを着る人が得るものは、結局はシンプルな感情だ。いつもより可愛くなれてうれしいとか、自分らしく居られてしっくりくるとか、言葉にするとありきたりに聞こえるかもしれない。だが、平成の時代を生き抜いてきたのはそういう価値を強く持っているブランドだ。
前年に比べて今年はこう、といった話だけでなく、より長期的にブランドや企業を理解する視点を忘れずにいたい。
(石)