オフィス街を歩いていると、スーツ姿の若者が目に付く季節になった。4月1日には業界各社の多くが入社式を開き、その訓示には「挑戦」や「チャレンジ」といった言葉が多く見られた。AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)が普及しつつある転換期の時代は、先が見えにくい不透明な時代でもあり、新たな発想で時代を切り開いていくことを期待したいということだろう。
しかし、振り返ってみればバブル崩壊以降の日本は不透明な時代の連続だったはずだ。
記者が新入社員だった10年前でさえ、「若者なんだから新しい事を云々(うんぬん)」と先輩諸氏に言われたことを覚えている。
少子化に加え定年延長が進み、ベテラン社員の比重が高まる昨今。挑戦していくことが大切なのは何も若者だけではあるまい。むしろ今まさに現場にいる人にこそ、挑戦する姿勢が求められているはずだ。
スーツ姿の若者を見て、あのころ思い描いた立派な社会人になれただろうかと自問自答すると同時に、初心忘るべからずという言葉が頭をよぎった。春はそうしたことを思い出させてくれるいい季節でもある。
(騎)