「商品はとても良かったのだが、当社の顧客が求めている商品ではなかった。生産数量も当社の規模に対しては多過ぎた」と振り返るのは、ある専門店の社長だ。同社には昨年、数々の大手ファッション企業で実績を積んだ人材が加わり、新たな自社商品の開発・販売に着手した。当初、業界内外で話題となったが、売れ行きは思わしくなかったようで、店頭で大幅に値下げ販売されているのも目にした。
過去に勤めていた企業にいくらネームバリューがあっても、規模の異なる転職先で必ずしも活躍できるとは限らないのだと感じた。同時に、物あふれ、服あふれと言われる現代において、単に良い商品を作ったからといって、簡単には売れないのだと再認識した。自社の顧客はどんな人たちで、どんな服を必要としているのか。今まで以上に丁寧に探求する必要があると感じる。
元々、業界内での転職が多いことに加え、最近はM&A(企業の合併・買収)も盛ん。自社の経営に新たに加わる人物が、いかに素晴らしい経歴を持っていたとしても、素直に言うことを聞くだけではうまくいかないだろう。
(友)