《視点》やりがい搾取

2018/11/29 06:23 更新


 経団連が先日発表した、大手企業の今冬のボーナスは平均95万6744円で、昨年よりも3.5%増えたという。一方、中小企業を加えた民間企業平均では39万円とのデータ(三菱UFJリサーチ&コンサルティング「18年冬のボーナス見通し」)があり、大手と中小の開きは大きい。

 中小企業の中には、支給ゼロというところも少なくないようで、記者の友人もその一人だ。ある日、会社の待遇に対する不満を聞かされたので転職を勧めたのだが、「今の仕事にやりがいはあるし、会社を辞めるのにはためらいがある」との返事が返ってきた。

 やり取りを横で聞いていた彼の奥さんは、「そういうのを〝やりがい搾取〟と言うのよ」と、あきれ顔でつぶやいた。近年、ブラック企業が問題になっているが、従業員の〝やりがい〟に付け込んで適正な対価を払わないのも十分ブラックと言える。

 今、あらゆる業種で人手不足が指摘されている。社員のやりがいを搾取して企業が生き残るのは、ますます難しくなるだろう。心なしか疲れ気味の友の顔も早く晴れればいいのだが。

(恵)



この記事に関連する記事