「事業を続けるのか、廃業を考えているのか。全組合員に聞いて回る」。あるアパレル業界団体の理事長が取材時に話していた。聞くと、団体でECサイトの運営を考えているらしい。サイトを通じて組合員の商品を売り、エンドユーザーとつながりを持ち、ビジネスに役立てるためだ。
組合員の多くが厳しい経営状態にある。地方専門店の苦戦とともに、地方の中小アパレルメーカーも体力をなくしている。だから、各社ともこういった前向きな取り組みに賛同するかと思いきや、「できっこない」「無理だ」と消極的な声が多いらしい。新しい動きにはアレルギー反応が出てきやすい。そのため「本音の部分を確認し、やる気があるなら進めていきたい」というのだ。
聞き取りはある意味では組合員減につながる危険性もある。経営者の多くは70代で後継者がいないケースもあり、寝た子を起こしかねない。その理事長自身も80歳に近いが、勇気ある行動だ。こうした取り組みが組合員のやる気を引き出すことを願っている。
(森)