「ヴェイン」(榎本光希)は7月11日、24年春夏コレクションのショーを東京・新木場で行った。榎本が引き継いだ「アタッチメント」との合同ショーを過去に3回行ってきたが、単独で見せてブランドに焦点を当てた。
キーカラーは生成り、ベージュ、ブラック。これまでの主張のある色柄や強いディテールをそぎ落とし、シンプルなカットにフェミニンなエッセンスを利かせた。柔らかな風合いのシャツ仕立てのブルゾンは、袖元がたわむようなラインを描く。下に合わせるのは、大きなポケットの付いたラップスカート。パンツとのレイヤードを楽しめるアイテムを単体で着用したスタイリングは、女性的な繊細さが感じられる。ドローイングの柄をプリントしたシャツやショートパンツは、軽やかな輪郭を描く。
全体を新鮮に見せるのは、ハイウエストのボトム。股下がダボッとしたバギーパンツはブランドを象徴するアイテムの一つだが、ウエストの位置を上げて、ブルゾンやシャツの裾を無造作にイン。梳毛の生地を使ったTシャツに、イージーパンツを合わせる。デイリーでもカジュアルに陥らない、品のあるバランスを感じさせた。「今シーズンは単独でショーをやると決めたら、ヴェインのありのままを表現しようと楽観的に考えることができた。Tシャツに白パンといった、肩肘張らない、日常の感覚を楽しんでもらえたら」と榎本。
ショーが終わると扉が開き、バーカウンターを挟んで自動演奏の音が流れるピアノの舞台が現れる。来場者がドリンクを片手に囲むと、楕円(だえん)型の光の下で、アタッチメントのセットアップを着用したモデルのインスタレーションが静かに行われた。
(須田渉美、写真は加茂ヒロユキ)