【商社・新たな階へ③】持続可能性など“時代の標準”を

2018/04/08 05:00 更新


 サステイナビリティー(持続可能性)やエシカル(倫理的な)、エコロジーに配慮した素材や製品が求められ、企業の評価基準の一つになりつつある。欧米に比べて国内市場の関心は薄いが、「価値観が一気に広がる可能性」(瀧定名古屋)を見越し、各社は開発に力を入れる。

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ESGが評価基準に

 欧米企業に原料やテキスタイルを販売する商社にとっては、エコやサステイナブル、エシカルは重要なテーマだ。18~19年秋冬に向けても様々に提案している。

 帝人フロンティアは「持続可能な生産と消費」を大きく打ち出し、リサイクルの推進、バイオ由来原料の使用、オーガニックコットンの活用、環境汚染物質排出低減、気候変動への適応、有害化学物質使用低減、省エネ貢献型製品を具体的に推進する。

 オーガニックコットンではヤギがインドでの取り組みを進化させ、豊島は「オーガビッツ」ブランドでアパレルメーカーや小売業と提携し使用する製品を増やしている。環境への負荷を減らす点ではヤギのリサイクルコットン「リサイカラー」が欧米から注目されている。

 「今、ESG(環境・社会・ガバナンス)が世の中から評価される材料となっている。グローバルSPA(製造小売業)は特に顕著だ」とする伊藤忠商事の小関秀一専務執行役員繊維カンパニープレジデント。「長年、繊維原料のビジネスを止めずに続けてきた。この知見を生かし環境に優しい原料から製品までをつなげたい」と話す。

三陽商会「ザ・スコッチハウス」は豊島の「オーガビッツ」を使った「エシカルコットンスラックス」を今月発売した

開発のスピード上げ

 来秋冬向け展示会で、エコ素材のコーナーを初めて作ったスタイレム。「ラグジュアリーブランドでニーズが高く、『18年から全てオーガニックかリサイクルの糸を使った生地に替えて欲しい』という顧客もあった」(スタイレムの谷田修一専務)という。ハイブランドから求められる品質は非常に高く、繊細な意匠糸使いも多いため、難度も高い。

 「日本でまだ低いニーズもにらみ、全社テーマとして開発のスピードを上げる」考えだ。廃棄される食品で染める「フードテキスタイル」に力を入れる豊島も、日本では顧客が様子見する状況がしばらくは続くと見るが、店頭での売り方や見せ方の提案にまで踏み込む。

 市場は確実に育ちつつある。豊通ファッションエクスプレスの透湿防水素材「ゼラノッツ」の販売は依然として好調で、環境に配慮した非フッ素撥水(はっすい)加工タイプへの顧客の評価は高い。モリリンはカセット店舗に再生紙ボード「リボード」を使って提案した。

 同社の資材グループが扱う欧州発の建材で、施工が簡単で再利用が可能な点を打ち出した。店頭で衣料品を回収し、ポリエステル樹脂から繊維を再生する日本環境設計との取り組みでは伊藤忠や豊島が参画するなど、動きは加速している。


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