アーバンリサーチ 竹村幸造社長「一からスタート」

2017/02/24 14:00 更新


 コストパフォーマンスの高い服が売れたり、ファッションよりも実用衣料の方へと向かうなど、消費が変わった16年。

 17年は、これからの小売業像を改めて考える最初の年に位置付ける。強みのECをはじめとしたデジタル戦略をさらに推進する。

 

“接客力を生かし、プロパー消化率を高める”

 

■ジレンマがあった年

 

――16年を振り返ると。

 一定規模以上の企業は、嗜好(しこう)性を強調したいけれど、売り上げも追わなければならないジレンマがあった年だったでしょう。私がこの世界に飛び込んだのは、ファッションとは嗜好品で、工夫して提案すれば、小さなところでも勝てるチャンスがある点に魅力を感じたからです。

 ところがファストファッションが広がったせいでしょうか。中価格以下のファッションは実用衣料化してしまい、この産業も結果的に大きなところが勝つ時代になってきた気がします。

――消費が変わったのか。

 低価格化は確かにあります。16年は熊本地震の影響からか消費マインドが萎縮し、生活防衛という意味で無駄使いを避ける人がいました。グローバル化も手伝って消費が実用衣料の方へ向かいました。

 当社でも原価率を上げた良いモノ、それでいて商品に見合った適正価格のリーズナブルなモノが売れています。単に安く作って粗利益を期待したモノに、お客はもう見向きもしない時代になりました。

――変化に対応するには。

 企業として勝ち残るにはコストパフォーマンスを生かしながらも、利益をきちんと出せる仕組みの構築が必要です。接客力を生かし、プロパー消化率を高めなければなりません。

 当社は売上高の20%以上を占めるECが一つの強みです。実店舗に比べれば経費のかからないECを伸ばすという方策も、コストパフォーマンスが問われる時代に対応していく一つのカギになると思います。

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アーバンリサーチ 竹村幸造社長

 

“最適な規模、最高の利益、価値の高い会社を目指す”

 

■一から始める気構え

 

――17年の目標は。

 これからの小売業とはどうあるべきかを改めて考える最初の年と捉えています。これまで積み重ねたものをいったん白紙に戻し、一からスタートするぐらいの気構えでいます。既存事業も時代の変化に合わせて修正します。これらを速く進めた会社にこれから先が約束されると考えています。前年に続きMDも見直してさらに完成へ近づけたいと考えています。

――出店計画や新ブランドは。

 出店は引き続き慎重に進めますが、すでに18店近くは予定が決まっています。新ブランドの予定はありませんが、いろいろと種をまいてきたものを進化・発展させたい。

 17年度(18年1月期)は10%の増収計画ですが、売り上げだけを追うのではなく、最適な規模、最高の利益、そして価値の高い会社を目指します。

――ECなどデジタルを生かした提案に意欲的だ。

 デジタル化はますます進むでしょう。当社は16年10月にECの基幹システムの入れ替えが完了し、従来よりも様々な仕掛けを繰り出す基盤が整いました。

 11月にはテレビCMと連動した販促を仕掛けて10万人の会員を獲得しましたし、アウトレットの新サイトも立ち上げました。今はECに関する新アイデアを集めている最中です。実店舗と同じような感覚でこれから肝になると捉えている物流も、集約して大型化を進めます。

 O2O(ネットと実店舗の相互送客)の手応えがあるブランド複合型の大型店「アーバンリサーチ・ストア」も強化します。春に名古屋で開く新店にはバーチャル試着サービスの「ウェアラブル・クロージング・バイ・アーバンリサーチ」を設置する予定で、既存のストアにも導入していきたいと考えています。

 

■アーバンリサーチの過去5年間の業績と16年度予想

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