東コレ17年秋冬 ブランドらしさをどう見せるか

2017/03/24 06:35 更新


 情報があふれ、服もあふれる中で、ブランドの個性がより強く求められる時代になっている。トレンドという大きな波に乗りつつも、ブランド本来の“らしさ”をきっちり発揮できなければ、淘汰(とうた)されてしまう。東京コレクションでも、軸がしっかりあるブランドの存在感がますます際立っている。

(五十君花実)

 いつもクリーンなムードの中に女性らしさをにおわせるサポートサーフェス(研壁宣男)だが、今シーズンはより大人の色気を感じさせる。直接的に肌を見せることはなく、一見男性的なアイテムを着ていても、カットやパターン、スタイリングによって、生地の奥にある女性の体を浮き立たせる。凛(りん)とした知的な感覚が漂うのがこのブランドらしい。

 レザーのように光沢のある質感のロングドレスやテーラードジャケットは、ウエストをきゅっと絞り込み、ニットトップやストレートスカートは体の丸みに沿う。ロングスカートはバックのみワイドパンツを解体したようなパターンになっていて、動きに合わせて布がひらめく。地厚なウール地のコートにはシルバーのメタルパーツでつやっとした輝きを差し、ノースリーブコートはバックのみをフラワープリントに切り替えてドラマチックな印象にする。フォルムを作るためのボンディング素材、極細の毛羽が揺れるフリンジ生地、クロシェのようなコード刺繍と、様々な素材が女性の体を彩る。

 ここ数シーズン、きれいではあっても、どことなく変化の乏しさを感じていたが、今季は新鮮な感覚を強く受けた。

サポートサーフェス


サポートサーフェス

サポートサーフェス

 ドレスドアンドレスド(北澤武士、佐藤絵美子)は、「ヴェットモン」登場以降すっかり街に定着したフォルムの変化を今シーズンも継続している。ワードローブの定番と呼べるシンプルなアイテムがベースになる。テーラードコートやスーツのジャケットは肩が大きくせり出し、シャツやピーコートはずるりとしたビッグシルエットをマントのように着こなす。新味は、キルティングのオーバーサイズコートやブルゾンだ。分かりやすい肌の露出などがなくても、どことなく抑制されたエロチックさやアブノーマルな印象が漂うのがこのブランドらしい。そうした個性を生かしつつ、そろそろ次の一手が見たい。

ドレスドアンドレスド

 ディスカバード(木村多津也、吉田早苗)は、枯葉を敷き詰めたランウェーで見せる疾走感のあるコレクション。ブランドらしいストリートのムードに、ところどころスーツスタイルやダブルフェイスのコートといった大人の上質アイテムを挟み込む。レイヤードのスタイリングや異素材切り替えがポイントで、ライトグレーのテーラードコートの下には光沢のあるスポーツブルゾンを重ね、スウェットトップの裾にはキルティングをつなげる。アメフト選手のように肩をいからせたダウンコートや、顔を半分覆ってしまうネックウォーマーやマフラーが面白い。らしさはありつつも、もう少し新味が欲しい気もする。

ディスカバード

 ティートトウキョウ(岩田翔、滝澤裕史)のショーには、モデルとして小松菜奈や福士リナが登場し、会場には多くのインフルエンサーが駆けつけて、とても華やか。ブリティッシュ、センシュアル、レトロムードといったトレンド要素やアイテムをふんだんに盛り込んだ。英国紳士風のチェック柄にはカラフルな刺繍を重ね、華やかな千鳥格子のツイードは、袖がフレアラインを描くコートに仕立てる。ブラウスの袖に飾ったリボンやブラトップは、少女っぽさと大人のフェミニンの間を突くバランス。トレンドの類似品が世の中にあふれる中で、「このブランドでなければダメだ」と思わせるには、もうあと一歩、個性が欲しい。

ティートトウキョウ

 秋冬物のみショーをする形式に変えたモトヒロタンジ(丹治基浩)は、古着のデニムパンツと合わせてニットトップのバリエーションを見せた。アーガイル柄とノルディック柄のカーディガンをドッキングしたようなデザインや、フリンジをたっぷりつけたケーブル編み、マフラーをいくつもはぎ合わせたようなデザインなど、様々なデザインを揃えた。テクニックを見せることにこだわって、肝心の女性の気持ちが置いてきぼりだった数シーズン前に比べると、ずいぶんとリアリティーが出てきた。ただし、デニムと合わせる形式は前回と全く同じ。今後は、ボトムや布帛を含めて自前でトータルスタイリングができるようになると、より幅が広がる。

モトヒロタンジ

(写真=加茂ヒロユキ、大原広和)




この記事に関連する記事