東京ブランド21年秋冬 ニットを独自の視点で楽しむ アートも反映して身近に

2021/07/19 06:27 更新会員限定


 東京ブランドの21年秋冬向けで、ニットを生かした新しいクリエイションが目を引いた。心地よい着心地や柔軟性のあるフィット感を持つニットは、性別や年齢を問わず今の時代を象徴するアイテム。表情の豊かなテクスチャーや大胆な配色を魅力に、着る人の個性を引き立てている。

(須田渉美)

 昨年デビューした「オニカ」は、フィンランドに留学してニットの魅力に引き付けられた黒沢秋乃が、日本のメーカーと協業して作るニットウェアだ。特徴の一つは、身近な情景を反映してストーリーを持たせた編地。秋冬のセーターで例えると、ケーブル編みを応用して点々と連なる黒い線を入れた「秋の残像」が描かれる。車に乗って出かけた時に、窓越しに次々と過ぎ行く景色の移ろいをイメージしたものだ。綿とウールを混紡した糸を使って、凹凸を強調しながらも、見た目よりも軽く仕上げている。

 コレクションを出すのは年に1回で、21年秋冬の新作はウェアで7デザインにとどまる。「命長い服を作りたい。じっくりクオリティーを高める物作りを大事にしている」という。自らが描く図案をもとに、ニットメーカーとともに糸や組織の調整を行って一つの形にしていく。叙情的な外観を表現すると同時に、ケアのしやすさや手の届く価格も配慮する。「普段の生活に根付いたブランドであること」が前提だ。厚手のセーターで4万円台半ば。ゆったりめの作りで基本はフリーサイズだ。カーディガンには、自らが手作りする陶ボタンを付けるなど手仕事の遊びも加えている。卸売りは昨年、コロナ禍で厳しい状況の展示会だったが、バランスの良さが評価され、感度の高いショップとの取引を始めた。

今シーズンは、北欧・日本に住む4人の写真家と協業し、それぞれの日常に根差したルックを撮影してもらい、展示も行った(オニカ)


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