19世紀、仏商業界をこの男が変えた。アリスティッド・ブシコー。帽子屋の倅として北仏に生まれ、パリで販売員として才能を発揮。そして1852年、当時42才のブシコーは、これまた出来た妻マルグリットとセーヌ左岸セーヴル通りにル・ボン・マルシェ(LBM)を開店。これが世界初の百貨店となる。
商品ディスプレー、値段表示、カタログ販売、そしてセールなど新商法のヒットを飛ばす。年末に読んだ本によると、クリスマスの初ウィンドーディスプレーもLBMだったことを知った。1893年のことだ。
それから120年後の昨年12月、このLBMにブシコー精神を見ることとなった。リニューアルが完成した食料品フロア「ラ・グランド・エピスリー・ドゥ・パリ」に。
オープニングで。ル・ボン・マルシェ会長兼社長のパトリス・ワグネー氏とダイアン・クルガーさん
パリの食通たちはこの改装工事に費やされた18か月間、オモチャ売場を奪われた子供のような心境だった。そしていよいよこの再オープンの夜、この大人たちは垂涎しながら、「美食のキャットウォーク」に仰天した。
18か月間、辛抱しました。リニューアル完成!(C)DR 美食のランウェイ 先頭はパン部門のシェフ、ニコラ・クリュエルさん
18か月間、辛抱しました。リニューアル完成!(C)DR
美食のランウェイ 先頭はパン部門のシェフ、ニコラ・クリュエルさん
食のプロたちがそれぞれの専門素材を纏い、19世紀の鉄骨建築をガラスとモザイクの美しいマルシェ(市場)に改装した3500平方メートルの売場をパレード!それに続き、魚売場ではカキ、パン売場では長さ1.7mのバゲットのサンドイッチ、肉売場ではローストビーフ、高級品売場ではスモークサーモンとフォアグラ、そしてフロマージュ、その他スシ、伊食品と数えきれないビュッフェがスタート。
このバゲット、本当に1m70cm。サンドイッチはパテとフォアグラのムースの2種
オープニングでは牡蠣はあっという間に消えてしまい、美味しいボーディエのバターが寂しそうだった
地下のカーヴではワインとシャンパーニュのテイスティング、2階の新レストランではデザート。職人たちの素材への眼差しと、素晴らしい手さばき。美味しい物に感謝の気持ちが加わると、より美味しくなる。
新しいラ・グランド・エピスリー・ドゥ・パリは、空間構成、最高のセレクション、粋なプレゼンテーションに左岸のエスプリと総て予想を遥かに越えていた。18か月間待った甲斐があった。天国のブシコー氏も愛妻とよろこんでいたに違いない。
それではここで「おいしいデータ」を
・品揃えはトータルで3万点!
・毎日同売場地下で焼いたパンが60種類。
・イタリアの食材は、フレッシュパスタ25種類、成熟18~42か月間のパルムの生ハム、成熟期を揃えたパルメザンチーズなど など
・量り売りのフォアグラは年間通しで10種類
・キャビアはフランス産、イタリア産、ブルガリア産、イラン産のオシェトラ、ベルーガ、セブルーガ
・ヨーロッパのフロマージュ(チーズ)140種類
・切り売りの高級スモークサーモン8種類
・550平方メートルのカーヴ(酒類売場)には、ワイン2000ラベル、その他アルコール類とシャンパーニュ1000品目。
375のとってもとっても高級なワインも。
・世界のミネラルウォーター100品目、ビールは140種類
・300フレーバーのお茶とハーヴティーに17種のカフェ
・世界のショコラ350種類
・2階にはレストラン「ラ・ターブル」、ラ・カーヴにはワインバー、季節の生トリュフが味わえるコーナー、イベリコの
タパスのカウンターもあり
・フランス国家最優秀職人(MOF)のタイトルを持つディレクターの下、販売員350人、うち職人62人が活躍
生きのよいイケメンが揃う鮮魚売場 (c)DR
フランスのガストロノミーがグっとくるではありませんか(c)DR
ルーヴル美術館所蔵の絵画のように美しい食肉売場 (c)DR
避けて通れません。パティスリーが待っている (c)DR
(c)DR
ラ・ブラッスリー 美味しいお水が100種類 (c)DR
レストラン「ラ・ターブル」のヴェリエール(ガラス屋根)
松井孝予
(今はなき)リクルート・フロムエー、雑誌Switchを経て渡仏。パリで学業に専念、2004年から繊研新聞社パリ通信員。ソムリエになった気分でフレンチ小料理に合うワインを選ぶのが日課。ジャックラッセルテリア(もちろん犬)の家族ライカ家と同居。