【記者の目】服飾副資材企業 環境商材開発と発信に力

2020/03/21 06:28 更新


【記者の目】服飾副資材企業、環境商材開発と発信が活発 市場の要望に合わせて幅広く 持続志向の急浮上で模索続く

 SDGs(持続可能な開発目標)の取り組みが世界的に広がるなか、国内市場にも環境配慮のテーマが急速に浮上してきた。服飾副資材を扱う企業は昨年来、アパレルメーカーや大手小売業のサステイナブル(持続可能な)志向への関心の高まりを踏まえ、環境負荷を低減する商材開発に力を入れ、発信も活発になっている。一方で、衣料消費の回復の遅れもあり、商談現場での模索は続くが、避けて通れない課題として位置づけを高め、需要の取り込みを強める。

(西日本編集部テキスタイル・アパレルパーツ担当=阿部拓)

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引き合い増える

 国内市場での環境配慮の意識は、これまでエコブームがあったものの、欧米のようなムーブメントとして定着してこなかった。しかし、この間の地球温暖化による異常気象や脱プラスチックの流れも重なって、昨年あたりから大手小売業や大手紳士服チェーン、有力SPA(製造小売業)ブランドなどが動きを強めている。すでに需要が顕在化しつつあり、この1年でファッションビジネスのキーワードになった。

 服飾副資材を供給するメーカーや卸にも対応商品の要望は増え、幅広い提案が求められている。各社は裏地や芯地、肩パッド、ネーム類、縫い糸などの繊維製品をはじめ、ファスナーやボタン、ホック、ハンガー、梱包(こんぽう)材などの金属・樹脂製品の開発を推進。リサイクルやバイオマスなど環境に配慮した原料の導入だけでなく、染色、塗装、メッキなどの製造プロセスも見直し、環境負荷の低減に取り組んでいる。

 卸の清原は昨年12月の大阪展で、リサイクルポリエステルの芯地や再生繊維キュプラ「ベンベルグ」の裏地、紙糸や生分解性プラスチックのロックス、水を使わないインクジェット捺染のポリエステル裏地などを揃え、アパレルに提案。今年2月のアパレル向け東京展でも環境対応商品を柱の一つに据える。

環境対応の芯地や裏地、糸ロックスなどを揃えてアパレルに提案(清原)

 樹脂ボタンメーカーのカナセは、「環境商材の動きが早まっており、引き合いが増加している」という。環境負荷を低減する再生アクリル混ボタン「パールライト」やペットボトルリサイクル樹脂ボタンを総合見本帳にも取り入れた。「資料収集段階のアパレルが多いが、言われてからでは遅く、積極的に情報発信する」とし、東京インターナショナル・ギフト・ショーの2月展に初参加した。

総合見本帳にも取り入れたペットボトルリサイクル樹脂ボタン(カナセ)

コストの壁も存在

 環境商材の商談は国内でも活発になってきたが、消費低迷による「コストの壁」も存在し、物性面の制約や供給不足の原料も一部にある。各社の業績を押し上げるまでにはいたっていないが、「お客のニーズは高まっており、無視できない課題。市場が間違いなく広がる」(島田商事)とする見方が一般的になってきた。

 脱プラの流れが既存の商量に影響すると見られる樹脂製品分野では、中央パッケージング工業が「逆風だがチャンス」と位置づけ、紙製のハンガーやフックの引き合いが目立ってきた。ネーム・タグのコバオリも「紙製パッケージを中心に業種を越えて問い合わせや採用事例が急激に増えている」という。

 市場の変化を踏まえ、環境配慮を中長期的な経営課題として正面に構える企業も増えてきた。YKKでは昨年、「YKKグループ環境ビジョン2050『人と自然の未来をひらく』」を策定した。気候変動への対応や資源の活用、水の持続的利用、自然との共生など「高いレベルの環境経営の実現」に取り組む。商品でもファスナーへの植物由来ポリエステル樹脂やオーガニック綿の採用、染色工程で水をほとんど使用しない染色技術の活用などで環境配慮型の開発を進める。

 モリトは24年11月期を最終年度とする中期経営5カ年計画で、「持続可能な成長に向けた取り組み」の一環としてSDGs達成への貢献を掲げた。アパレル事業で「モリトグリーンプロジェクトを始動」させ、グループ全体でもサステイナブルやエコにこだわった物作り、ダイバーシティー(人材の多様性)や女性活躍の取り組みも推進する。

 現在、「売り場やアパレルがどこまでこだわるのか手探り中」とみる副資材企業は多いが、独自の技術開発力や海外調達力を強みに、市場の要望に合わせた提案がさらに拡大しそうだ。

阿部拓=西日本編集部テキスタイル・アパレルパーツ担当

(繊研新聞本紙20年2月17日付)

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