【記者の目】大手の寡占化進む子供服市場 専業が生き残るためには

2020/07/25 06:29 更新


 子供服市場で大手専門店の寡占化が進んでいる。販路ごとのシェアは00年以降大きく変化し、近年は西松屋チェーンやしまむら、ユニクロなどの低価格が強みの大手専門店が大きなシェアを占める。新型コロナウイルスの影響で西松屋チェーンが好調なことに加え、7月には成長著しいワークマンが子供服、子供靴の販売を開始する。大手がますます売り上げシェアを高める中で、子供服専業企業が生き残るためにはどうすべきか考えたい。

(大阪編集部子供服担当=金谷早紀子)

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3社で市場の2割強

 繊研新聞社の調査によると、西松屋チェーン、ユニクロ、しまむらの子供服売上高の合計は、00年が約500億円だったが、18年で1949億1100万円と4倍になった。国内の子供服の市場規模は9200億円と推計され、3社の合計は市場全体の2割強を占める。子供服専業企業はほとんどが減収傾向だが、外資系SPA(製造小売業)や、大手専門店、セレクトショップのファミリー業態の増加で市場規模を維持している。気軽に買い物に出かけられない子育て世代はECと親和性が高く、近年はEC専業ブランドやインスタグラムを起点とした個人のEC販売も存在感を増しており、まさに玉石混交となっている。

 新型コロナウイルス流行下で、西松屋チェーンは強さを発揮。19年11月から売上高が全店、既存店ともに回復基調だったが、20年2月、3月も2ケタ増と急伸。6月も既存店売上高が33.8%増で、子供の夏物衣料が極めて好調に推移した。全国に1012ある店舗はほとんどがロードサイドで、売り場面積も660~990平方メートルと広く、天井が高く、通路も広い。3密を避けて買い物したいという消費者心理が、西松屋に足を向かわせている。ウィズコロナの現状では、買い物をなるべく一カ所で、時短で済ませたいという気持ちが働き、ユニクロや無印良品など総合専門店で子供服の買い物も済ませる人が増えるだろう。ますます大手専門店の寡占化が進むと予想される。


「ブリーズ」に注目

 一方、子供服専業企業に目を向けてみると、18年度調査(18年7月~19年6月)で増収しているのは16社中ナルミヤ・インターナショナル、ブランシェス、マーキーズ、オルソブルーの4社のみ。ナルミヤはマルチチャネル戦略が奏功。「プティマイン」「ラブトキシック」と市場を引っ張るブランドの育成にも成功している。しかし、ほとんどの企業は百貨店やSCに販路が集中し、競争激化に飲み込まれている状態だ。

 そんな中、F・O・インターナショナルの「ブリーズ」の復調に注目したい。ブリーズは、SC中心に全国152の店舗網を持つ同社の主力SPA業態。そのためチーム全体が守りに入り、前年踏襲型の企画が増え、ここ3年は既存店売り上げを割っていた。19年3月に組織再編し、3カ所に分かれていた部署を一つに集約したことで、企画と販売が一つのチームになった。新業態開発に携わった人材を事業部長、商品部次長に据え、19年秋冬物では店頭在庫を前年の8割に削減して収益性が改善。20年春夏物からは商品企画も一新し、パンツの新たな売れ筋商品を生み出した。

既存店売り上げを割り続けていた「ブリーズ」は前年踏襲型の企画から脱して復調している

 現場では、いかに「ブリーズらしくない」という言葉を払拭(ふっしょく)するかが重要だったという。新しい企画に挑戦しようとしても、「らしくない」という言葉が変化を妨げていた。かといって、ブリーズの服を自分の子供に着せたいかと聞けば、ノー。「そんなにうちのお客様ってダサいの?ブリーズらしいって何?と、あえてとぼけて聞くようにしていた」と、磯野克事業部長。上の責任で作りたいものが作れる環境にしたことで、新しい商品が生まれた。例えば、パンツは総ゴムが大半のなか、身長は伸びるがウエストは変わらない小学生の特徴に着目。アジャスター付きのウエストコードパンツを開発し、ヒットにつなげた。

 同社は「まだないモノを創る」として、デザイン性のある3Pパンツ(下着)や1900円ボトムで成長した企業。原点に立ち返り、機能性と手頃な価格にデザイン性を加えた「ロイヤルアイテム」を開発することで、大手専門店とは異なる立ち位置を築こうとしている。

 新型コロナウイルスの流行は、自社の強みは何なのかを見つめ直す機会となった。ブリーズのように事前に手を打ったブランドは珍しく、ほとんどの企業は強みをどう深掘りするか動き出す段階だ。さらなる競争激化は避けられないが、子供時代の豊かな洋服体験は大人になってからの服への関心度にもつながる。子供服市場が中小企業も含めた様々な企業で活性化し続けることを願っている。

大阪編集部子供服担当=金谷早紀子

(繊研新聞本紙20年6月29日付)

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