素材から始める持続可能なファッションビジネス⑤

2018/10/13 06:30 更新


【リサイクルウール】回収、再生の仕組みは古くから

 ウール(羊毛)は羊の体を覆っている体毛を利用した繊維で、人類と長らく共生してきた。ウールを使用した衣服や寝具は数千年前の中近東までさかのぼる。利用後に廃棄しても生分解され、地球環境への負荷が少ない。

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 元々繊維原料としては高価なウールは古くから、製品の製造過程で発生した繊維くずを回収し、再利用するシステムが定着している。リサイクルウールは反毛(はんもう)と呼ばれ、主に紡毛糸やフェルト、不織布などに生まれ変わる。

 紳士服業界などでは使用後のウール製品を店頭で回収し、循環させる取り組みがある。

 一方で紡績から織布、染色、製品化までの羊毛産業をみると、水やエネルギー、加工する薬剤などを使い、環境への一定の負荷がある。サステイナブル(持続可能)な事業構築を目指して、当該業界ではさまざまな工夫がされている。

ウール産地の尾州は、最新のウール生地を毎年紹介

 ウールのニット製品や寝具わた向けでは、経年変化による収縮やフェルト化を防ぐために、塩素系加工剤を使った防縮加工が広く行われてきた。しかし塩素系加工剤が地球環境に良くないという観点から、非塩素系加工剤を使用するほか、プラズマなど物理的な力による加工が広がってきた。

 また、ウールは染まりにくく、黒や紺などの濃色はクロムなどの金属系染料が使われてきた。この金属系染料も欧州が主導役となって使用をやめ、世界的には環境負荷が少ない染料使用に置き換わってきた。

 もう一つ、ウールで欠かせないのが羊の生育環境の維持だ。皮膚のひだが深いメリノ種羊ではニクバエのうじ虫がでん部などに付きやすい。このためメリノ種子羊のでん部を一部切除するミュールシングが、ニクバエの多い豪州で広く行われてきた。動物愛護の観点からミュールシングが批判され、豪州では段階的に減らしているほか、ミュールシング羊毛使用も減っている。一方で牧羊業者側からは「ミュールシングに代表されるうじ虫対策を行わないと、子羊の死亡率が高まる」との反論もある。

ウール産地の尾州は、最新のウール生地を毎年紹介

(繊研新聞本紙9月13日付)



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