【再生セルロース繊維】CO2削減、廃棄物汚染で注目
限りある天然資源を大切に使い続けるという視点に立つと〝再生可能〟は重要な課題の一つだ。ここで言う再生可能とは、利用の速度が再生能力を超えないこと。衣服に使用される素材の原料をみると、多くの合成繊維が由来する石油は、数百万年をかけて生成、蓄積されたと考えられており、枯渇性資源、非再生産資源とされている。対して植物は、適切に管理すれば、一定の期間をかけて再生可能だ。
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植物を原料にした化学繊維(人工的に作られた繊維)に、再生セルロース繊維がある。木材などが含む繊維素(セルロース)を化学処理で溶かし、再びセルロースに作り直して繊維にしたもので、生分解性もある。最も浸透しているのは、レーヨンだ。木材パルプや竹を苛性ソーダや二硫化炭素で化学処理し、その溶液をところてんを作るように口金から酸性浴中に押し出し、糸にする。この製造方法をビスコース法という。
これに対し、銅アンモニウム法による再生セルロース繊維をキュプラという。実綿から綿花を取った後に残る、本来繊維として使用されないコットンリンターを使用し、銅アンモニア溶液に溶解して糸にする。世界で旭化成が唯一生産し、「ベンベルグ」の名で知られる。

リヨセルは原料はレーヨンと同じ木材パルプだが、有機溶剤以外に化学薬品を使用しない。工場内で廃液として出た溶剤を回収し、再利用する。この点で、再生セルロース繊維の中でも環境負荷が少ないといえる。セルロースを化学的に変化させるレーヨンに対し、リヨセルはセルロースそのものを溶かした溶液を使うため、比較的強度が高く、適度にハリ・コシがある。その製法から、厳密には精製セルロース繊維と言われ、代表はオーストリアのセルロース繊維メーカー、レンチングの「テンセル」だ。
木材パルプを主原料にした繊維にはもう一つ、トリアセテートがある。酢酸を化学的に反応させて作った繊維で、半合成繊維に区分される。製造するのは世界で三菱ケミカルのみで、「ソアロン」のブランド名で広く販売している。
しかし、再生可能性だけでサステイナビリティー(持続可能性)が語れるわけではない。使用する化学薬品やエネルギー資源の管理、廃液や二酸化炭素の排出量低減など、自然環境に配慮した生産体制が、個別に追求されている。レンチングのテンセル、三菱ケミカルのソアロンは、植林から育成、伐採まで適切に管理された森林から調達した木材を使用しており、FSC(森林)認証を取得している。旭化成のベンベルグ工場は生産工程で発生した繊維くずを発電の原料にするなど、工場の廃棄物をほぼ100%リサイクルしている。また、自社発電設備を使用し、再生可能エネルギーの導入率が4割に上る。
(繊研新聞本紙9月12日付)