【生分解性繊維/バイオ由来合繊】CO2削減、廃棄物汚染で注目
石油を原料とする合繊やプラスチックは、衣服や身の回り品に広く普及した。今や生活に欠かせない素材だが、石油製品の負の側面にもスポットが当たるようになってきた。
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一つは石油資源を利用することに対する懸念で、枯渇が懸念される有限資源であること、地球温暖化の一因とされるCO2(二酸化炭素)を排出することなどが挙げられる。
これに対して植物由来の原料を使った合繊が登場し、バイオベース合繊と言われて注目されている。ポリエステルの一種のPTT(ポリトリメチレンテレフタレート)はダウ・デュポンがバイオベースポリマーを開発し、これを使ったPTT繊維は日本では帝人フロンティアの「ソロテックス」、東レの「プライムフレックス」がある。このほか、植物由来のナイロン610を東レが開発し、プライムフレックスのナイロン版などに展開している。これらは原料の一部を植物由来に置き換えたもので、合成割合によって「バイオ化率○%」として表現される。
100%植物由来の合繊も開発されている。ユニチカの「キャストロン」はトウゴマの種子から取れた油を原料にしたバイオ化率100%のナイロン。産業繊維で先行し、スポーツ・アウトドアでもニーズを探る。
東レはポリエステルでバイオ化率100%製品の事業化を目指す。試作には成功しており、コストや原料調達なども見極めながら商業化の時期を検討している。

もう一つの負の面は、土中や海中で分解されにくいこと。海洋プラスチック汚染は今日、環境問題の大きなトピックスだ。
生分解性を持つ合繊は以前から開発されてきた。生分解とは微生物の働きによって水と二酸化炭素にまで完全に分解されること。光による劣化などでプラスチックがもろくなることはあるが、これは生分解された状態ではない。
生分解性合繊でよく知られるのがPLA(ポリ乳酸)だ。国内ではユニチカが「テラマック」として展開し、ティーバッグや農業資材、3Dプリンター用材料などに使われている。PLAはバイオマス合繊でもある。ただし、通常の衣服として使うには耐久性が低く、熱に弱いなどの弱点があり、用途が限られる。
海外ではごみ回収のコンポスト(たい肥化設備)が普及しているため、生分解性プラスチックが広がっているが、日本ではたい肥化させるプロセスも普及のネックになっている。
また、生分解性=海中での分解性ではない。土中とは微生物の生息状況が異なり、分解が進みにくいためだ。カネカが開発した100%植物由来の「カネカ生分解性ポリマーPHBH」は、海水中での生分解性も持ち、欧州の機関からも認証取得している。プラスチックバッグ、コンポスト袋などで採用が進んでおり、繊維での展開も可能という。
(繊研新聞本紙9月11日付)