素材から始める持続可能なファッションビジネス②

2018/10/07 06:30 更新


【リサイクル繊維】国内の合繊メーカーがいち早く推進

ケミカルリサイクルで新規参入も

 最近になって海洋廃棄プラスチックの問題が日本国内でも大きな話題となっている。脱プラスチックの動きも出始めているが、身の回りにはプラスチック製品があふれ、これを一気に置き換えるのは容易ではない。

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 アパレル製品では合成繊維(合繊)がそれにあたるが、合繊メーカー各社は早くからリサイクルに取り組み、資源の無駄を抑える循環型のサプライチェーンを推進してきた。省資源を目指す取り組みとして「3R」(リデュース、リユース、リサイクル)という言葉があるが、このうちリサイクルは、廃棄物を資源として再利用することだ。

 分別収集されたペットボトル、合繊メーカーや樹脂メーカーの工場から出る廃プラスチック・合繊、裁断くずなどが主な原料になり、回収衣料が再生されるケースは、総量の一部にとどまっているのが現状だ。

 合繊のリサイクルでは、主に三つの手法が確立されている。最もシンプルなのはサーマルリサイクルで、これは廃棄物を燃料として活用する方法。繊維製品に再生する手段として最も普及しているのは、マテリアルリサイクルだ。

 マテリアルリサイクルは、原料となる廃棄プラスチックを細かく砕いて洗浄し、熱で溶かして紡糸する。流通量の多いポリエステルが最も多いが、ナイロン、ポリプロピレンなど熱で溶ける樹脂も同様の手法が使える。

 ただし問題は、品質にばらつきがあること。回収ペットボトルなどは物によって純度が違うため、糸にしたときに均一なスペックを保ち続けるのは難しい。このため、マテリアルリサイクルでは、短繊維のわたを不織布のフェルトや詰めわたにしたり、主に綿・ポリエステル混の定番素材に使うことが多い。エコマークのついた作業服などは代表的な製品だ。最近では漁網リサイクルなどストーリー性のある企画を打ち出す商品も登場している。

 これに対して、新品の糸と同様の品質が得られるのがケミカルリサイクル。回収したプラスチック・合繊を化学的な処理によって合繊原料まで戻し、再び通常のプロセスで合繊を作る。帝人(現在は帝人フロンティア)がポリエステルで02年に技術を確立し、賛同するアパレルメーカーと共同で取り組んできた。

異型断面など差別化糸でケミカルリサイクルの特徴を出す(帝人グループ)

 品質の高い糸が作れる半面、普及のネックはコストだ。プロセスが増える分、通常の新品の合繊以上の価格になってしまう。このため、合繊メーカー、アパレルメーカーで理念を共有しながら、一定のコストを引き受ける枠組みが重要になる。

 最近では、環境ベンチャーの日本環境設計がケミカルリサイクルに参入し、これに商社が出資するなどビジネスとして熱も帯びつつある。また、ユニチカトレーディングも新たにポリエステルで独自のケミカルリサイクルをスタートし、関心が高まっているエコ素材で商機を見いだす。

(繊研新聞本紙9月7日付)



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