魅力ある商品、コンテンツを作り上げ、消費者にイメージを伝えていくことは、顧客作りには欠かせない。デザイナーは企画はもちろん、商品がどう伝わり、購買につながっているのかを意識。商品開発の思いなどを効果的に伝える販売促進は施策を模索しながら奮闘している。
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郊外型の紳士服専門店からスタートしたAOKIは主力のビジネス向けだけでなくカジュアル、レディスを強化し、「ライフ&ワークスタイルのAOKI」へ現行事業モデルからの転換・刷新を目指している。そのためにも新たなイメージや開発商品を消費者に伝える販売促進の役割は大きい。デジタルコンテンツを活用した新規客へのアプローチなど、島本晃太郎さんと辰谷幸美さんに現状と今後について聞いた。
――仕事内容は。
島本 20年に入社し、AOKIの店頭販売、商品部を経験し、現在、販売促進・ネット通販部広告コミュニケーション戦略課チーフをしています。テレビコマーシャルの製作からデジタル広告の運用、コンテンツマーケティングやSNSなどを担当しています。
辰谷 16年に入社し、SC向け業態「オリヒカ」の販売員、店長を経て、現在は販売促進部プロモーション課チーフとして、SNS運用、雑誌タイアップ、衣装提供などを担当しています。
ゼロから作り出す
――今の仕事のやりがいや魅力は。
島本 個人的にはゼロから1を作り出す仕事にやりがいを感じています。コンテンツマーケティングの新たな取り組みやデジタル広告とテレビCMの連動など前例のない仕事も魅力的です。また、お客様の負(悩み)を解消する働く女性に寄り添うブランド「ミワク」のテレビCMで洗えるスーツを訴求したところ、来店客数や販売数量などが伸び、お客様の生活を支えられていることを実感できました。コンテンツマーケティングとしてジャケットを着用する女性を応援・サポートする「ジャケジョ研究所」では、社会問題化している夏の冷房対策を調査したところ、NHKテレビで取り上げられるなど話題になりました。

辰谷 SNSの世界は、トレンドや表現方法が毎週のように目まぐるしく変わるので、新しいことをキャッチしたり、学べたりすることにやりがいを感じています。また、お客様のニーズ・ウォンツをダイレクトに感じられるのもSNSの魅力です。「SNSを見ました」と店頭で声を掛けられることもあるので、なるべく販売応援に立ちたいと思います。オリヒカのインスタグラムは約6割がシーン別や気温別などのスタイリング投稿です。バズったコンテンツは通常の5倍ほど反応があり、保存数も多かったです。
新たなファン増やす
――現状の課題は。
島本 ミワクの認知度向上です。そのために媒体ごとに伝え方を変えています。テレビCMでは有名タレントを起用し、インパクトのある内容で幅広い世代に届けます。SNSではスタッフの表現力や工夫によって、たくさん作るようにしています。オウンドメディアでは広告では動かない層へアプローチしています。
辰谷 全てのお客様のたくさんある悩みに応えられないのが課題です。そもそも時間や人員が限られているので全てに答えを出すのは難しいですが、できるだけ多くのSNS投稿で情報を発信していきたいと思います。インスタグラムはお客様の日常生活に溶け込みやすいので、オリヒカを浸透させて好きになってもらうことで困ったときに思い出してもらいたいです。新規客の開拓や認知度向上にも有効だと思います。

――今後のビジョンは。
島本 レディス分野で先行しているコンテンツマーケティングの取り組みをメンズにも広げていきたいと考えています。個人的には、マーケティングのプロになれるように様々な媒体を活用し、自分ならではの戦略を描けるようになりたいです。
辰谷 店頭との連携をもっと強化したいと思っています。店舗の協力によってSNSのフォロワーも増えます。SNSで販売員がスタイリングを紹介する「スタッフスナップ」を強化するだけでなく、将来的には社内インフルエンサーを育成できればと考えています。
(繊研新聞本紙25年8月18日付)