【専門店】サンクリエーション「えがお洋品店」 店舗での買い物に新たな価値へ

2022/11/14 06:29 更新


店内は過剰な在庫は置かずに3週間ごとに入れ替え、中央テーブルでプレゼン

 サンクリエーション(太田明良社長)が運営する東京・巣鴨のシニア向けセレクトショップ「えがお洋品店」は9月15日、「店舗で買い物をする」ことに新たな価値を提案する店として、移転・リニューアルオープンした。新たに予約制などのサービスやシステムを導入、「お客様が笑顔になれて、特別感を持ってもらえるような運営で差別化していく」としている。同社はヘアサロンや写真館、ヘアメイク、ネイルサロンを運営しており、〝えがお〟になれるシニアビューティーを総合的に提案していく。

事前予約制で自分だけの時間

 えがお洋品店は50代以上の女性に向けたシニア世代のためのショップ。巣鴨地蔵通り商店街に面したビル2階のヘアサロンとネイルサロンとの複合店から、商店街から少し入った立地の写真館との入れ替えで、独立した新スタイルとなった。店舗面積は約50平方メートルで、リニューアルに合わせて客の要望に応える三つの新メニュー・システムを導入した。

 運営は事前予約制に変更。コロナ禍で、「人との接触を控える傾向は薄らいできたが、お客様の自分だけの空間や演出で特別感を提供する」ためだ。また、ECで購入する客も増えており、オリジナルや古着でない限り同じ商品が他店でも購入できる。「ネットで購入した方がポイント還元などで安い場合もある。わざわざ足を運んでもらう」ためには、差別化した体験型を強めることにした。リアル店で購入する客の「実物を見たいから」「試着したいから」にも丁寧に応える目的もある。

 予約客の来店時は店頭にお知らせの案内を置き、鍵も閉める徹底ぶり。予約時間は約1時間で、その間は「あなただけの時間と空間」として、落ち着いた環境でじっくり買い物が楽しめる。入店後は服を選ぶ前に、ヘアメイクとネイルを無料で施し試着へ。特別感のある服を提供するのが特徴で、「お客様の雰囲気を一段上げて、服を提案する」ことで、普段と違う購買意欲や関心が高まるという。ヘアサロンの客がセット後に「服を買いに行こう」ということを良く聞くことから、服の提案の前に無料で行うことを決めた。

百貨店の外商のような雰囲気でおもてなしする試着室

面倒なことをしっかりやる

 予約したからといって「購買する必要はない」と、まずは店の雰囲気や特別感を味わってもらい、次の来店につなげていく。予約制なので事前に客の好みなどを把握することができ、中央のテーブルにはスタッフが考えた一人ひとり違ったスタイルやアイテムを並べて提案する。試着室は3畳ほどの広々とした空間に、ソファと鏡、テーブルを置き、ゆっくりくつろげる空間を演出している。

 品揃えは「アダワス」「ダル」「ホーク」「ローカリー」「サイ」「ヤーキ」など。太田社長は「本来、ファッションアイテムに年齢制限はない。だが、現状は世代ごとにファッションアイテムが存在する。私たちは世代の垣根を超えたブランドを揃え、トレンドに左右されないデザイン性と上質な素材使いのアイテムを提供していく」考えだ。

 9日間のプレオープンは顧客やヘアサロンからの送客などで、買い上げ率100%の日もあり、客単価は約13万円の顧客も。購買は「まずは自分の満足感を刺激し、『きれい』『いつもと雰囲気が違っていいよ』など、他人から見られる評価を求める」ため、メイクなどで雰囲気を変えてファッションを楽しんでもらえる環境作りに注力している。一人ひとりに合った違う提案やおもてなしなどは手間ひまがかかるが、「面倒なことをしっかりやることが、差別化につながる」と強調する。「100人の来店で10人の買い上げを目指すより、1人の来店で1人に買ってもらえることに意味がある」と、新たな運営に手応えを感じつつもノウハウの構築や満足度をさらに高めていく取り組みを強めていく。

【ビフォー/アフター】メイク、ネイルとショップが提案するコーディネートで雰囲気を一変させる

シニアに向け総合的な経営へ

 巣鴨には全国から来街してくる。へアやメイク、ネイルを施して、セレクトしたファッションに身を包んで撮影する写真館は好調で、「特別感があり、口コミで広がっている」という。コロナ禍では遠方からの来店は減ったものの回復傾向で、客の構成比は東京の20%を含む神奈川や埼玉、千葉で40%、北海道や関西、九州など地方からの来店が60%を占める。ヘアサロンとメイクサロンの売り上げは21年度比約50%増で、19年度比でも超えるなど好調を維持している。

 今回、ショップリニューアルで洋服の客を増やし、ヘアやメイクサロン、写真館とともに、「各分野のクリエイター集団で、巣鴨の街を盛り上げてシニアに向けた総合的な経営を目指していく」考えだ。10月下旬には商店街の入り口付近にエステサロンをオープンする予定。今後はノウハウをもとに、賛同する企業へのFC展開も検討している。すべての事業をまとめたFCではなく、ヘアサロンとセレクトショップなど商圏や立地などに合わせ、効果が発揮できる柔軟な組み合わせなどを考えている。国内では巣鴨以外に直営店を出店することは考えていない。新しいシニア向けビジネスを広め、「〝えがお〟になれる場所、きれいになれる場所を増やしていきたい」としている。

太田社長

(繊研新聞本紙22年9月29日付)

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