【専門店】個店で増える予約制の導入 時間と空間を独占、丁寧な接客

2020/12/30 06:28 更新


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 予約制を導入する個店専門店が増えている。顧客と真剣に向き合う時間を確保し、関係性をさらに強めるのが狙いだ。以前から予約制で運営していた専門店では、顧客満足やスタッフの成長などの面で成果は大きいという。自分だけの時間と空間、丁寧な接客が提供され、顧客の心を満たす。店にとっても予約のない時間帯は、準備やトレーニング、全体のコミュニケーションなどに活用できる。コロナ禍の今、あらためてそのメリットが見直されている。

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■「ワガママトウキョウ」 服と向き合う場

 「来店客にはきちんと洋服と向き合って買い物をしてほしい。そのために最高のパフォーマンスと空間で臨みたい」と、ワガママトウキョウの中村勇貴代表は11月から完全予約制の店舗運営に切り替えた。

 東京の〝奥渋エリア〟の路地の半地下の立地に開業してまだ2年足らず。メンズセレクトショップで別注品を基本とした品揃えで、「元々じっくり接客したいとの思いからふり客が多い立地を避けて選んだ場所。立ち上げ時から予約制も想定していた」という。このタイミングで踏み切ったのは「自店のすぐ近くに引っ越したのが一番の理由」。コロナ禍での外出自粛期間中にトライアルした来店予約の成果も決断を後押しした。

 予約客には事前に要望を聞いた1着と中村代表がお薦めするアイテム数点だけで待つ。バックヤードに商品を納められるように内装を工事し、店内には全身が映る大きな鏡と提案する服のみ。余計なものを置かないから、服に集中してもらえる。特別なウェルカムドリンクをバカラのグラスに注ぎ、全力でおもてなしする。スタートから6日間で160万円を販売。「売り上げは通常営業時と変わらないが、今のところ買い上げ率は100%。来店する顧客の情報が事前に分かっているので、接客サービスの精度も高まる」と手応えを感じている。

 予約は30分単位だが、後の予約がなければ延長できる。職住一体のため、定休日もなくし、朝9時から夜中の12時まで顧客本位で柔軟に対応できる。予約がない時間にはECの作業やSNSでの発信に力を注ぐ。作業に集中できるため、店舗運営上もプラスだ。特にユーチューブで獲得した新規顧客が、ECや来店予約などにつながっている。インスタグラムのフォロワーは現在9600人。インスタライブも継続しており、少し前からユーチューブでのライブ配信も始めた。別注品を紹介するユーチューブだけアーカイブを残しており、その積み重ねが自店のファン作りにつながっている。ただし「万人に受ける店ではないので、予約制によってハードルを上げることで、コアな顧客との濃厚な関係が築ける」としている。

ワガママトウキョウの中村代表

■「ディアナガーデン」 事前に入念な準備

 レディスセレクトショップのディアナガーデン(大阪府箕面市)は、13年から予約制を導入している。一見客の入店も認めていたが、コロナ禍での緊急事態宣言を受け、完全予約制に切り替えた。同時に休日を増やし、閉店も1時間切り上げた。

 完全予約制となり、営業時間が短縮されても売り上げに大きな影響はなかった。「むしろ、時間当たりの売り上げが伸びた感がある」(保田惠一代表)という。予約制は「お客様のためでもあり、スタッフのためでもある」という。来店時間が分かっているから、提案商品やコーディネートなど事前に準備ができる。しっかり準備していれば、より接客に気持ちが入る。保田代表は、女性スタッフが働きやすい環境作りに重点を置いてきた。十分な休養をとり、日常生活を楽しむゆとりが、仕事の質を高め、顧客へのサービス向上にもつながる。

 予約制を導入する以前から店で働く石原幸愛さんは予約制にしたことで、「1人のお客様に集中して、ていねいに十分な提案ができるようになった。リラックスしてもらえ、会話とともにお買い物を楽しんでいただける」。売り逃しはほとんどなく、客単価が20万円を超えることも珍しいことではない。予約制のもう一つの利点として、「長くブランドと付き合う顧客の育成」も挙げる。「メーカーからの信用を築くには、そのブランドのファンを顧客に持つことが欠かせない」からだ。

完全予約制で顧客の来店を待つディアナガーデン

■「アルティジャーノチャオ」 1日3人まで

 欧州の高級紳士服のリサイクルショップを運営するアルティジャーノチャオ(名古屋市、丹下徹代表)は、10月1日に名古屋店を栄から名古屋駅近くに移転したのを機に、原則予約制とした。新型コロナウイルス感染拡大防止もあるが、「1人当たりのサービスを今まで以上のものにしたい」として、1日3人まで、1人当たりの接客時間は2時間としている。客の体形や仕事、将来像など細部まで話し合い、最適なファッションを提案する。フィレンツェの仕立て屋のような内装で、ジャズを流し、ゆったりとしたサロンのような空間を演出する。

 店頭に並ぶのはスーツで定価20万円以上、革靴で10万円以上。時計店のWhiteKings(ホワイトキングス)が週に1回、ビンテージ時計を出展している。

 欧州のクラシックなファッションとともに、ぜいたくな空間と質の高いサービスを独占できる満足感を提供できるのは、予約制ならでは。「自分の理想の店ができた。社会に受け入れられ、3~5年後も同じ形態を維持していきたい」としている。

サロンのような空間で顧客をもてなすアルティジャーノチャオ

(繊研新聞本紙20年11月19日付)

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