【専門店】開店直後のコロナショック 新店オーナーは今、何思う⁉

2020/08/10 06:29 更新


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 大手企業の隙間を突き、店主独自の目利き力や接客力などを強みに成長する個店専門店が目立ち始めていた新型コロナウイルス感染拡大前。ここ1年以内に新規開業した店も多い。しかしながら、開業間もなくしてコロナショックを経験。新店の店主たちは今、何を思うのか。話を聞くと、実店舗の存在意義や自店が果たすべき役割を再認識し、方針を改めて明確にした店が多いことが分かった。

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◇丁寧な接客と顧客との深い関係作りに自信

ムスターヴェルク(大阪・靭本町)

 20年4月末に大阪・靭本町で開業したメンズ主体のセレクトショップ「ムスターヴェルク」は、新興の大手セレクトショップから独立した、新宅勇也代表が切り盛りする。前職で磨いた丁寧な接客と、それによって築き上げた顧客との強いつながりを武器に、コロナ禍での開業ながら順調に推移している。国内ブランドを中心に、「過去・現在・未来の名品を扱う」というコンセプトの独自性のある品揃えも魅力だ。

 「マーティー&サンズ」「ラキネス」「ウェルノード」「ポステレガント」などの新興ブランドに加え、ビンテージのアクセサリーやスカーフ、ネクタイ、アイウェアなどをミックスした商品構成だ。秋冬は大幅に取り扱いブランドを拡充する。中心客層は関西圏在住の30代前半の男性で、業界関係者も多い。開業間もないが、通信販売に顧客が付いているのも特徴。ECサイトは設けず、電話やダイレクトメッセージ、ビデオチャットを使用して必ずコミュニケーションを介して行う。「勝手に服が売れていくのは嫌。店での接客と同様に作り手、自分の思いなど、伝えたいことがたくさんある。それらを知った上で、納得して購入して欲しい」というこだわりがある。

 前職に入社した当時から、「5年で独立し、店を開く」と決めていた。「目標に向けて計画的に準備を進めてきたため、コロナ禍であっても開業に迷いはなかった」という。「初めて接する瞬間から生涯のお客様」と意識して研鑽(けんさん)を積んできたことが今に生きている。この姿勢は通信販売でも同様だ。「店とブランド、僕自身のファンになってもらう」という考えのもと、商品には必ず手書きの手紙を同封する。すでに通信販売のリピーターも複数いる。

1991年生まれの新宅代表。コロナ禍でも自信を持って店を開いた

 コロナによる環境の変化を受けて、「やってきたことは正しかったと再認識できた」と一層の自信を得た。店、自身の考えをぶらすことなく、「お客様との関係構築、サービスの向上、ここでしか買えない、できない体験型イベントでのファンづくりといったサイクルを強化していく」考えだ。20年2月と3月に数日間の期間限定販売会を行った関係で、21年1月末時点の初年度売上高目標は5100万円とする。

店舗面積は82.5平方メートル。将来的には上顧客のみ入室可能なVIPルームを設ける計画

◇2人の「好き」を軸に集めた商品は多彩

プレイン・クローズ・シフク(横浜・青葉区)

 横浜市青葉区の田園都市線・たまプラーザ駅近くのユニセックスセレクトショップ「プレイン・クローズ・シフク」は、レディス主力の大手SPA(製造小売業)で長年経験を積んだ大平英明さん、友美さん夫妻が運営する。地方発のドメスティックブランドの新品や古着、生活雑貨など、2人の「好き」を軸に集めた商品が、特定のジャンルにとらわれることなく、多種多様に揃うのが魅力。コロナ禍で「店としてやりたいことにしっかり向き合うことができた」という。

 「上質な商品を手頃な価格かつ、作り手が手の届く範囲で供給している」ことに魅力を感じ、新品は福岡発「カッタ」「フジト」、宮城発「タタミゼ」などのローカルブランドを扱う。一方で、「人それぞれに物に対して好きな理由があるはず」との考えから、古着は国やテイストを限定しない。商品もメンズ・レディス、新品・古着の垣根なく陳列し、宝探しのような楽しさを演出する。平均単価は新品約2万円、古着約1万円。客層は女性が6割で、30代以上が多い。

 英明さんは約20年間、友美さんは約10年間、同じSPA企業に勤めた。大手企業の仕事にやりがいを感じていたが、東日本大震災を機に夫婦の時間を見つめなおし、2人の店を開くに至った。「店主と長時間話しながら、実際に物を見て、触れて買うのが好きで、そんな場所を作りたかった」ため、実店舗にこだわった。自店は「人と人が会話を楽しめて、出会いが生まれる場に育てていきたい」という。

大平英明さん、友美さん夫妻の温かい人柄も同店の魅力

 コロナ禍でも、感染対策に十分な配慮をした上で休業はしなかった。客数が減り、少なからず不安もあったが、「こんな時でも足を運んでくれるお客様がいてくれた。そんな人たちのために、改めて店としてやりたいことを丁寧に提案していくべきだと強く感じた」。開業直後にコロナの外的影響を受ける形となったが、「前年実績がないことも前向きに考えられる要素になった」という。「とにかく我々が楽しむことを大切に考えて店を運営していきたい。楽しめてさえいられれば、お客様は自然と付いてきてくれる」と自店の方針を強固にした。

売り場面積は約40平方メートル。メンズとレディス、新品と古着が分け隔てなく並ぶが違和感はない

◇服の魅力伝え、コミュニティーの場に

レポートショップ(東京・代官山)

 東京・代官山のメンズセレクトショップ「レポートショップ」(小寺宏樹代表)は昨年11月に開業したが、入居する建物の不具合による改修後、今年2月にフルオープンしたばかり。その後、コロナ禍で4月は休業、5月の大型連休明けから営業を再開した。

 同店はオリジナルブランド「セルクレイグ」「AWM」を軸に仲間のブランド「アモク」「ラキネス」などからの仕入れ品と直接米国から買い付ける古着で構成する。渋谷方面に向かう路地裏の路面立地で1階(約23平方メートル)と地下1階(約30平方メートル)の売り場となる。小寺代表は「自分で作ったモノを自分で売ることが昔からの夢だった」という。学生時代から大阪の紳士服工場でアルバイトをしながら熟練職人からパターンや縫製技術を学び、13年前に上京してからもOEM(相手先ブランドによる生産)企業に入社し、物作りの現場との取り組みを深めてきた経験が独立後の店作りに生かされている。

 今回のコロナ禍を経験し、「服を買うという行為は娯楽であり、体験の場なので、ECだけで満足しきれない」と確信したと小寺代表。大手セレクトショップなどのEC売り上げが数倍伸びたと言っても実店舗の売り上げをカバーするまでには至らないところがほとんど。「最終的にリアル店は作り手の思いとともに服の魅力を伝える場であり、コミュニティーの場でもある」との思いは変わらず、人と人との信頼関係で成り立つ個店の役割はアフターコロナでこそ、再評価されるはずだ」と強調する。

「自分で作って自分で売るのが夢だった」という小寺代表

 個店など小売業と同様に、コロナ禍で厳しい状況を強いられた国内の縫製工場を支援するプロジェクトを5月に立ち上げた。クラウドファンディングで日本製デニムのオリジナルブランドでパンツ3型と襟変形Gジャン1型を販売し、売上金額の一部を縫製工場に還元する取り組み。その後も、自店で扱うブランドと協業した「支援を見える化」するイベントも店頭で計画している。

古着とオリジナルをミックスした売り場

(繊研新聞本紙20年7月9日付)

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