「好きなアーティストと一緒になれる。素敵な取り組み」。こう評価されたのはシキボウのアップサイクルの仕組み「彩生(さいせい)」だ。音楽イベントと連携し、来場者から中古のTシャツを回収するとともに、出演アーティストやイベントスタッフからもTシャツを回収。それらをミックスし、翌年のイベントTシャツに生まれ変わらせるという企画を実施。二つのイベントで合わせて約2100枚を回収した。
(小堀真嗣)
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このほど連携した音楽イベントは、中四国最大級の野外ロックフェスといわれ、香川県の国営讃岐まんのう公園で開かれた「モンスターバッシュ」(8月19、20日)と、音楽イベント企画・運営のプラムチャウダーとロックバンドのスピッツが主催し、大阪城ホールで開かれた「ロックロックこんにちは!」(9月16、17日)。モンスターバッシュでは約800枚、ロックロックこんにちは!では約1300枚を回収した。
ロックロックこんにちは!の会場では、「音楽イベントのたびにTシャツを買うけど、サイズが合わなくなったり、ヨレヨレになったりして着なくなった物がクローゼットにたくさんある」という来場者が複数いた。いずれも「思い入れはあるから、燃えるゴミとして処分するなんてできない物ばかり」と悩んでいた。この企画で「単純に廃棄するんじゃなく、大好きなアーティストのイベントに関われて、そのアーティストのTシャツと一緒に新しいTシャツの材料になるなんて素敵」と話し、「Tシャツに生まれ変わるのが今から楽しみ」と喜んだ。
彩生はシキボウグループで杢糸を主力とする新内外綿が、裁断くずや中古衣類などを反毛し、再び糸にする仕組み。単純な廃棄を減らそうとするアパレル企業からの関心が高く、引き合いが増えている。
今回の企画はシキボウと取引先のオザキ(香川県多度津町)との間で、「服の循環(購入から使用、廃棄、再利用)を彩生で促せないか」という対話から生まれたアイデア。衣類回収・再生の取り組みは増えてきたが、最初の難関はなるべく多くの物量を回収すること。回収した衣類の状態や組成、付属の有無といった後工程における課題もあるが、彩生の場合は小回りの利く独自の仕組みで、様々な状態の衣類に対処できる。とはいえ、まずは一定規模の物量が集まらなければ、設備の操業効率自体が低下する。今回の企画は、わざわざ自宅から持ち込みたくなる特別な動機付けをしたことがポイント。消費者の心に響くユニークな取り組みだ。